出エジプトにおいて、モーセはリーダーとして神に立てられていました。
　しかし、神に立てられていたリーダーであったモーセにも限界がありました。


　大勢のイスラエルの民を、自分一人で裁いていたからです。
　そこには、長い行列ができていました。
　民は順番にモーセに裁いてもらうために、一列に並んでいたのです。


　イスラエルの民は、彼らの間に何か事件が起こると、
　神に問うためにモーセのところに行き
　モーセはそれぞれの間を裁き、神の掟と指示とを知らせていました。


　モーセと民の様子を見ていた、モーセのしゅうとでミディアンの祭司であるエトロは
　「あなたのやり方は良くない」と、指摘します。


　「モーセもモーセを訪ねて来る民も、疲れ果ててしまう」と言うのです。
　「このやり方ではモーセの荷が重すぎて、一人では負いきれない」と
　エトロは状況を見て判断し、それをモーセに告げたのです。


　エトロは、ただ単にやり方が良くないと指摘しただけでなく
　その解決策も、モーセに提示しています。
　それは、役割を分担するように民を組織化することでした。


　「民全員の中から、神を畏れる有能な人で、
　不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選びなさい」というのです。
　そして彼らを、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として

　民の上に立てなさい、というものでした。
　一言でいえば、人を立てて権限移譲を行うというものです。
　イスラエルの民を組織化するよう、提案したのです。


　その事案が、モーセのところまで持って行く程のものでなければ、
　自分たちのうちで解決させるように、提案したのです。
　そのレベルに応じて、千人隊長、百人隊長、．．．十人隊長に裁かせるというものでした。


　モーセは、エトロの提示してくれたこの提案を受け入れます。


　モーセのしゅうとエトロは、短期間しかモーセのところに滞在しませんでしたが
　イスラエルの民とモーセのために、大きく用いられています。
　そのままでは、モーセもイスラエルの民も疲弊しきってしまうところでしたが

　エトロの助言によって、この問題は見事に解決されました。
　モーセの負荷も軽減され、民は多くの事件が起きても
　的確な裁きを十人隊長などから、速やかに受けることができるようになりました。

　私たちも、ほんの短期間でエトロのような用いられ方をする場合もあります。
　今までそこにいたわけでもなく、その人々を詳しく知っていたわけでもなかったのに
　その様子を一度見ただけで、「その問題点がわかり解決を提示できる」ということがあるのです。

　神が、そのように私たちを用いられる場合もあるのです。
　またエトロのような人を、私たちに遣わされることもあります。
　エトロのように、その時だけ神に遣わされて来る人もいるのです。

　神が遣わされたその人の言葉を軽んじることなく、聞く耳をもって受け入れ、
　それを行うことが、その後の歩みにとって非常に重要なこともあるのです。

　【今日の聖書】
　モーセのしゅうとは言った。
　「あなたのやり方は良くない。
　あなた自身も、あなたを訪ねて来る民も、きっと疲れ果ててしまうだろう。
　このやり方ではあなたの荷が重すぎて、一人では負いきれないからだ。
　出エジプト記　１８章１７〜１８節