300デナリオンの献げ物
1.ある女性がナルドの香油をイエスの頭に注ぎかけた
ナルドの香油を献げた女性の話が、聖書に出てきます。
イエスがベタニアで重い皮膚病の人シモンの家にいて、
食事の席に着いておられたとき、
一人の女が、純粋で非常に高価なナルドの香油の入った石膏の壺を持って来て、
それを壊し、香油をイエスの頭に注ぎかけた。
マルコによる福音書 14章3節
その女性は、純粋で非常に高価なナルドの香油の入った石膏の壺を持って来て、
それを壊して、香油をイエスの頭に注ぎかけたといいます。
非常に高価なナルドの香油と書かれています。
2.ナルドの香油は超高級品だった
その香油が高価であったことは、そこにいたほとんどの人に明らかでした。
ですからその場にいた人に、大きな衝撃を与えているのです。
「あんなに高いのに、こんなに注いで何してるんだ!もったいない!」という衝撃です。
そこにいた人の何人かが、憤慨して互いに言った。
「なぜ、こんなに香油を無駄遣いしたのか。
この香油は三百デナリオン以上に売って、貧しい人々に施すことができたのに。」
そして、彼女を厳しくとがめた。
マルコによる福音書 14章4〜5節
「この香油は三百デナリオン以上に売って、貧しい人々に施すことができたのに。」
と言われていることから、少なくとも300デナリオンで売ることができたようです。
1デナリオンを、ブドウ畑の収穫時の1人頭の日給にできたのですから、
これはすごい額になります。日給300日分ですから、年収に匹敵する額です。
売ってお金にしたら、1年間は収入がなくても暮らせるような
そんな額だったわけです。
3.なぜこの女性は超高級なナルドの香油を持っていたのか?
ここで疑問なのは、「この女性は、なぜそんなに高価な香油を持っていたのか?」
ということです。それ程高価な香油を、この女性は自分の意志でイエスに注いでいます。
自分の自由にできたということは、自分のものだったということです。
男性中心の社会の中で、夫を亡くして食べるのにも窮していたやもめがたくさんいた中で
女性であるこの人が、それほどまでに高価な香油を自分のものとして所有できていた、
ということは、その家庭がよほど裕福な家庭だったということが伺えます。
もし貧しかったら、真っ先に香油を売って食糧に変えていたことでしょう。
そんなことをしなくても、高価な香油を所有し続けられていたのは
やはりそこに、その家庭の経済的豊かさが感じられます。
父親の職業が、多くの収入をもたらす職業だったのでしょうか?
それとも、代々お金持ちの家だったのでしょうか?
むすび.惜しみなくすべてささげきる愛
いずれにせよ、超高級品のナルドの香油を、
惜しげもなく、イエスの頭に注いだわけです。
1デナリオンを12800円とすると、1レプタは100円になります。
レプタ2つを献げた女性がほめられていますが、そのレートで行くと
レプタ2つは200円になります。
一方ナルドの香油は、少なくとも300デナリオンということなので、
12800円×300=384万円ということになります。
100万円の札束を3つと、さらに84万円です。
これをわずか一日で、いやわずか数分で、使ってしまったのです。
器を壊しているところを見ると、使い切ってしまっているのです。
ふたを開けて、少しだけ注いで、ふたを閉めてあとは持って帰るというのではなく
器を壊してしまって、もうもとには戻せなくしているのです。使い切ったのです。
イエスに注ぎきっているのです。惜しげもなく、すべて注いでいるのです。
お金に換算していない、自分のすべてをささげるような献身の思いが伝わってきます。
多くの人は「勿体ない」といったかもしれませんが、
しかしイエスは、この女性をほめています。
すべてを焼いてしまってささげる、全焼のいけにえのように、
この女性も、すべてをささげようとしていたのです。
【今日の聖書】
イエスは言われた。
「するままにさせておきなさい。
なぜ、この人を困らせるのか。
わたしに良いことをしてくれたのだ。
貧しい人々はいつもあなたがたと一緒にいるから、
したいときに良いことをしてやれる。
しかし、わたしはいつも一緒にいるわけではない。
この人はできるかぎりのことをした。
つまり、前もってわたしの体に香油を注ぎ、
埋葬の準備をしてくれた。
はっきり言っておく。
世界中どこでも、福音が宣べ伝えられる所では、
この人のしたことも記念として語り伝えられるだろう。」
マルコによる福音書 14章6〜9節