総督と言えども
イエス・キリストが、総督ポンティオ・ピラトの前で裁きを受けていた時
ピラトはイエスを釈放しようと思っていたのですが、
人々は、イエスを十字架につけるように要求し続けています。
１．ピラトの１回目の釈放提案
総督ポンティオ・ピラトは、イエスに罪がないことに気づいていました。
だから、人々の前で「この男は死刑に当たるようなことは何もしていない。」と
断言しているのです。
ピラトは、祭司長たちと議員たちと民衆とを呼び集めて、言った。
「あなたたちは、この男を民衆を惑わす者としてわたしのところに連れて来た。
わたしはあなたたちの前で取り調べたが、訴えているような犯罪は
この男には何も見つからなかった。ヘロデとても同じであった。
それで、我々のもとに送り返してきたのだが、
この男は死刑に当たるようなことは何もしていない。
だから、鞭で懲らしめて釈放しよう。」
ルカによる福音書 ２３章１３〜１６節
しかし人々は、イエスではなく
明らかに殺人罪を犯していたバラバの方を釈放するよう、求めるのです。
そしてイエスは、殺すように求めるのです。
しかし、人々は一斉に、「その男を殺せ。バラバを釈放しろ」と叫んだ。
このバラバは、都に起こった暴動と殺人のかどで投獄されていたのである。
ルカによる福音書 ２３章１８〜１９節
２．ピラトの２回目の釈放提案
ピラトはさらに、人々にイエスを釈放することを呼びかけるのですが、
聞く耳を持たないのです。
人々は、「十字架につけろ、十字架につけろ」と叫び続けているのです。
ピラトはイエスを釈放しようと思って、改めて呼びかけた。
しかし人々は、「十字架につけろ、十字架につけろ」と叫び続けた。
ルカによる福音書 ２３章２０〜２１節
３．ピラトの３回目の釈放提案
ピラトは三度目にも、イエスの無罪を主張しています。
「この男には死刑に当たる犯罪は何も見つからなかった。」と断言するのです。
ピラトは三度目に言った。
「いったい、どんな悪事を働いたと言うのか。
この男には死刑に当たる犯罪は何も見つからなかった。
だから、鞭で懲らしめて釈放しよう。」
ルカによる福音書 ２３章２２節
ピラトの釈放提言に対して人々は、ますます強く大きな声で
「イエスを十字架につけるよう」要求してくるのです。
ところが人々は、イエスを十字架につけるようにあくまでも大声で要求し続けた。
その声はますます強くなった。
ルカによる福音書 ２３章２３節
その声に負けてしまい、ピラトはイエスを十字架につけるように許可してしまうのです。
そこで、ピラトは彼らの要求をいれる決定を下した。
そして、暴動と殺人のかどで投獄されていたバラバを要求どおりに釈放し、
イエスの方は彼らに引き渡して、好きなようにさせた。
ルカによる福音書 ２３章２４〜２５節
むすび．総督と言えども群衆の叫びには勝てなかった
ピラトの負けてしまった原因は、数の上で圧倒的に負けていたことにあります。
いかに総督と言えども、反対者の数には勝てなかったのです。
自分が正しいと思っていることも、他の全員が正しくないと言ったとすると
地位があっても権威があっても、負けてしまいやすいのです。
多数決の原理です。大勢が勝ってしまうのです。
指導者にとって、外敵に攻められることは脅威ではありますが
それよりもむしろ、支配下にある大勢の民衆の反対の方が
やっかいなことだったのです。
民衆の賛同が得られなければ、如何に権威をもっていようと
民衆のコントロールが、できなくなってしまうからです。
不本意であっても、民衆の意を汲んだ決断をせざるを得なくなるのです。
この手の失敗は、かのサウル王もしています。
サウルはサムエルに言った。
「わたしは、主の御命令とあなたの言葉に背いて罪を犯しました。
兵士を恐れ、彼らの声に聞き従ってしまいました。
サムエル記上 １５章２４節
孤高に民衆の反対の叫びに対して、ひとり負けずに立ち通した人物がいます。
葦の海とエジプト軍に挟まれていた時の、モーセです。
彼は民衆の恐れの叫びにも負けず、主に従い通しています。
それこそが、私たちの模範です。
神に力を頂くときに、モーセのように孤高な戦いにおいても
勝利することができるのです。
【今日の聖書】
モーセは民に答えた。
「恐れてはならない。
落ち着いて、今日、あなたたちのために行われる主の救いを見なさい。
あなたたちは今日、エジプト人を見ているが、もう二度と、
永久に彼らを見ることはない。
主があなたたちのために戦われる。
あなたたちは静かにしていなさい。」
出エジプト記 １４章１３〜１４節
