今日のできごと


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2017/11/25(土)



公園と伝統的街並み

 松江市は、江戸時代の伝統が息づく街です。
 市内各所に、江戸時代からの名残が残っています。
 江戸の伝統を受け継ぎ守ってきたので、それがいまだに続いています。

 すべての伝統を、守り続け残し続けるべきでしょうか?
 伝統の中には、思い切って捨てなければならないものが存在しています。
 伝統と現代社会の間には、大きく乖離した部分が明かに存在しているのです。

 1.伝統的な道と現在の交通事情の乖離

 1.1 江戸時代は歩行者中心

 例えば道路です。昔の道は、そのほとんどが歩行者用に作られていました。
 今のように、自動車が対面で通行するようにはできていませんでした。
 バスやトラックなど、まったく想定外です。

 そのため、今となっては車が入れずに不便なままになっている所や、
 一方通行になっていて、通りにくかったりする所も数多く存在しています。
 拡幅工事も行われてはいますが、既存の家屋の立ち退きに困難を極めています。

 1.2 江戸時代は城を守る目的があった

 また、城下町ですので道路にも防御機能をもたせてあります。
 容易に城に攻められないように、わざと通りにくくしてあるので
 車の円滑な流れを妨げていたり、見通しが悪い交差点になっていたりします。

 1.3 現代は城にどんどん入らせるという目的に変わった

 今となっては、敵を城に近づけさせない仕組みの道はもう必要ないのです。
 逆に、観光客が城に簡単に行き着ける道路が必要なのです。
 道路を昔のままの姿で残すというのは、実は観光の逆なのです。

 そういう道路は、日常生活を不便にさせることにもなってしまい、
 付近の住民が、不便さを強いられてしまうのです。
 江戸時代には好都合だった道も、現在の交通事情には適さなくなっています。

 2.伝統的な街並みと現在の子育て環境の乖離

 2.1 江戸時代に公園など皆無

 伝統と現代社会の乖離した点のもう一点は、公園です。
 日本の公園は、明治時代以降に開設されたものなので、
 基本的に江戸時代にはありませんでした。公園のない街並みだったのです。

 観光や歴史的遺産保存のために、江戸時代の街並みや建造物を残そうと
 すればするほど、そこに、新たな現在の施設を作れなくなってしまうという
 ジレンマに陥ってしまいます。子供を遊ばせる公園が造れないのです。

 2.2 子供には公園等の遊び場は必要不可欠

 幼児や小学生たちにとって、公園は必要です。
 公園を中心に街を形成することが、一般的になって来ている現在、
 松江市では、既存の市街においてそれが難しい現状があるのです。

 その結果、どうしても公園が隅に追いやられ、子供が遊ぶには程遠い環境に
 公園が造られることになって、公園で誰も遊んでいなかったりするのです。
 子供たちが遊びに行きやすく、安心して遊べるような公園が必要です。

 子育て中のお母さんが、気軽に子供を連れていけて
 安心して子供を遊ばせられる、そんな公園がないと、
 松江市が目指す「子育て環境日本一」は、難しくなってしまいます。

 2.3 子供軽視の伝統が江戸時代の街並みにも反映されている

 伝統の武家社会では、男尊女卑で女子供は軽んじられていました。
 そのような文化的伝統が、街並みにも反映されており、そこには
 「子供のための公園を作る」などという発想はあり得ません。

 男尊女卑や女子供を軽んじるというような、悪しき伝統は
 捨て去る必要があります。伝統的な街並みを残すということは、実のところ、
 かつての悪しき伝統を、消極的に容認していることになってしまうのです。

 このような伝統を受け継いだままでいると、いつまでたっても
 住宅の隅に公園を造る、余った場所に公園を造る、公園はなくてもいいという、
 子どもを軽視した施策が、続いていってしまうことでしょう。

 3.伝統的な物資の流通システムと現在の流通システムの乖離

 3.1 江戸時代は水運が主流なので河川が必須

 江戸時代は、より多くの物資をより遠方に運ぶために
 水上交通を活用していました。
 松江市も多くの船が行き来して、発展していった城下町でした。

 そのため堀川や、水路が張り巡らされ、
 小舟を使った移動や運搬が、便利な街になっています。
 堀川の風情が豊かで、観光資源にもなっています。

 3.2 現代は車が主流なので河川が障害

 しかし今や水上交通は、隠岐の島などに人を運ぶカーフェリーくらいで
 そのほとんどが、トラックや飛行機などに取って代わられてしまいました。
 そうなると堀川は、返って交通の妨げになってきてしまっているのです。

 堀川や河川を渡るためには、橋を架けなければならないからです。
 堀はかなり埋められ、道路になったりしていますが、
 それでもまだまだ、大量の車を捌ける橋が少なく車の渋滞を招いています。

 3.3 新たに駐車場の需要が生じてきた

 また車社会になって、水上交通では想定外だった駐車場も必要になってきました。
 現在松江市中心部では、駐車スペースが足りず、市議会でも
 駐車場の少なさが、問題として取り上げられたりしています。

 松江市の中心部では、行政機関と観光施設が混在しているため、
 駐車スペースも、数十台レベルではなく、数百台規模が必要とされています。
 しかし、既存の伝統的建造物や伝統的街並みの間に、

 数百台レベルの広大な駐車場を、割り込ませて作るというのは
 非常に難しいようです。特に、江戸時代に水辺を埋め立てて造成された
 市の中心部は、地下施設を造るのが難しいようで地下駐車場が造れないようです。

 むすび.伝統を壊さなければ現代社会に適応できない

 観光都市松江ですが、観光のために伝統に重きを置いてしまうと
 「通行しにくい道路」や「車を停められない街」が出来上がってしまい、
 逆に観光客に不便を与え、「観光しにくい街」になってしまいます。

 それはまた、住民にとっても、公園がなく「子育てのしにくい街」、
 「移動のしにくい街」になってしまい「住みにくい街」になってしまいます。
 昔ながらの伝統が、すべて良いのではないのです。

 伝統にとらわれずに、思い切って街の発展に妨げとなる伝統を
 切り捨てる覚悟をもって、街づくりをしていく必要があります。
 近所に公園や広場がない街では、子どもは外で思いっきり遊べないのです。
 
 子どもが生き生きと育つ街こそ、将来と希望がある街と言えるのです。

 【今日の聖書】
 また、だれも、新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりはしない。
 そんなことをすれば、ぶどう酒は革袋を破り、
 ぶどう酒も革袋もだめになる。
 新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。」
 マルコによる福音書 2章22節


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