今週のメッセージ

　敬うということ　ゼカリヤ書１：７～21より

　１．神の家族観

　今日は母の日です。そして今日は父母感謝礼拝ということで、両親に対する感謝と尊敬の気持ちを再確認することにしたいと思います。

　これは、これから築いていくことになるチャーチ・コミュニティーにとって、とても大切な、家族というものについて考えさせてくれる良い機会です。

　神は家族を大切になさいます。人間を造られた時に、まず「それゆえ男はその父母を離れ、妻と結び合い、２人は一体となるのである」と（創世記２：24）言われました。

　「それゆえ」というのは男と女はもともと一体であったことを指しています。人間は神に似せて造られましたから人格的存在であり、社会的存在です。

　三位一体の神は、唯一の神でありながら御自身の内で父、子、聖霊の、それぞれ別の存在でいらっしゃる御三方の親密な交わりがあります。しかし人間は神と違って完全ではありませんから、1人では社会的な存在にはなれません。そこで神は、もともと一体であった人間を2人に分けて、社会的な交わりができるようにしてくださったのです。

　ですから結婚というのは、神が造ってくださった元々の形に戻るという行為なのです。それが「２人は一体となる」と言われている御言葉の意味です。幸せの赤い糸ではありませんが、結婚する２人は元々一体だったのです。社会を形成するために神の御計画によって分けられ、別々の所で生まれ、育ったのです。世間的な言い方が分かりやすければ２人は運命の糸で結ばれていたのです。

　男女は結婚するのが自然です。そして２人は元々一体だったのですから二度と別々になってはいけません。それが「もはや２人ではなく、１人なのです。こういうわけで、人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません」（マタイの福音書19：6）という御言葉の意味です。それをあえて離婚するなら、それは神の御計画に反することですし、自分の半分がなくなるわけですから、大きな痛手を被ります。

　神は私達に最善をもたらす御計画を用意して下さっています。ですから、神の御計画ではない道を選べば最善は得られず、時には大変な苦痛を伴う結果を招きます。

　もっとも最近は、最初から神の喜ばれない結婚や、結婚とは言えないような結婚もあるので、その場合は離婚が不幸を招くという原則が当てはまらないこともあります。

　いずれにしても、夫婦は最小の社会単位であり、神が最も大切にされるものであることを覚えておきましょう。そして結婚すれば子供が生まれます。家族が増えます。それは御心にかなうことであり、喜ばれることです。ですから神は、その家族を大切になさいます。神に倣って私達も家族を大切にしましょう。

　２．神が家族を重んじられることが分かる例

　神が家族を大切になさることが分かる例を幾つか聖書の中から拾ってみます。

　ノアは無垢な人でした。そして神の御命令に従って箱舟を作りました。それは途方もないプロジェクトでした。長い時間がかかりました。しかし、やはり命じられたことを神は、やり遂げさせてくださったのです。そして神への彼の従順のゆえに、そして彼への従順のゆえに妻も、息子とその妻達も洪水から救われました。

　アブラハムが神の御約束を頂いた時、神は彼と彼に属する者達に割礼を受けるように言われました。その時、彼の家にいた人達は彼に従って、彼と一緒に、奴隷に至るまで皆、割礼をうけました。それは大変な苦痛を伴うことでしたが、みんなが苦痛を共にしたのです。みんなが一つの家族となりました。

　ソドムにいたロトを救おうとなさった時、神は彼と行動を共にした妻と２人の娘も救ってくださいました。ただ、彼の妻は途中で神の御言いつけを破ったので、そこで塩の柱になってしまいました。エリコの町が滅ぼされた時、ラハブの信仰により、彼女の指示に従った家族や親族の者は皆救われました。

　新約の時代に入っても、それは変わりません。「主イエスを信じなさい。そうすればあなたもあなたの家族も救われます」（使徒の働き16：31）という御言葉のとおりに、福音を聞いたピリピの看守は家族と共に洗礼を受けました。

　また使徒の働き10章には、コルネリオの勧めに従った彼の家族、親しい人達もコルネリオと一緒に聖霊を与えられたことが記録されています。

　これらの例から分かることは、神は家族を重んじられるということです。家族だけではありません。神を信じる主人に属する忠実な奴隷も、また信じる人と行動を共にする友人も同じように、神は救ってくださるということが分かります。

　ただ、そこには条件があります。夫婦が一体であること。夫が妻を愛し、妻が夫を敬うことが前提です。子供達が両親を敬い、その言葉に従うこと。また他の人達について言えば、ルツが姑のナオミに「あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です」（ルツ記１：16）といったように、神を信じている人を信頼し、その人と一心同体という気持ちがあることが前提です。その人自身は、その時、神との関係が確立していなくても、神を信じる人の言葉を聞いて神のおっしゃることを守るなら、神は救ってくださいます。

　出エジプトの前に主はエジプトを雹で打たれました。「雹はエジプト全土にわたって人を初め獣に至るまで、野にいるすべてのものを打ち、また野の草をみな打った。野の木もことごとく打ち砕いた」のです。しかし、その時「パロの家臣の内で主の言葉を恐れた者は、しもべ達と家畜を家に避難させ」被害に遭いませんでした。（出エジプト記９：25、20）

　同じことは過越しの晩にも起きました。多くの外国人もモーセの言葉を聞いてイスラエル人と同じことをして、災いを免れました。そして彼らはイスラエルと一緒にエジプトを出て、神の民に加わりました。（出エジプト記12：38）

　３．家族でも救われなかった例

　神との関係が確立していなくても、また信者の家族でなくても、この人の信じる神は本物らしいと考えて、信じる人と同じ行動をとる人は神の家族に加えられます。しかし逆に、信者の家族でも、信じる家族と一つでなければ神の民にはなりません。

　それは「『われわれの父はアブラハムだ』と心の中で言うような考えではいけない。あなた方に言っておくが、神は、この石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです」と言われている通りです。（マタイの福音書3：9）また「イスラエルから出る者が皆、イスラエルなのではなく」とも言われています。（ローマ人への手紙9：6）

　先ほど例に上げたロトの妻は、途中で神の御言いつけに背いたため、最終的には救われませんでした。またロトの他の娘達と、その婿達も神は救おうとなさいましたが、彼らはロトが伝えた神の恵みの知らせ、つまり福音を信じず、罪の中にとどまったので滅びました。（創生記19：12、14）

　またノアには沢山の子供や孫がいたはずですが、セム、ハム、ヤペテの３人の息子と彼らの妻以外はノアを通じて語られた神の言葉を聞き入れませんでした。そしてノアと彼に従った７人だけが箱舟に入り、信じなかった人達は滅びてしまいました。

　４．家族の間の秩序

　太陽は新聞やテレビが告げる日の出の時刻に昇ってきます。月も星も同じように規則正しく動いています。もう何千年もの間、変わりません。どうして、そんなことが可能なのでしょうか。

　極めて正確だと言われる原子時計でさえ長い時間の後には誤差が出ます。そして天体の動きの他にも人間では絶対に不可能なことが自然界には幾つもあります。例えば持っている物も、手を離せば落ちてしまうというような法則は、人間には作れません。神だけにできることです。そして神が御造りになるものには美しい調和、秩序があります。

　人間の体にも、素晴らしい秩序があります。決められた通りに細胞分裂を繰り返し、体は維持されます。そのお蔭で私達は生きていられるのです。

　太陽も月も決まったとおりに動いていますが、それは神が保持の力を働かせてくださっているからです。人間が恩恵を受けることができるように、必要なものが与えられるように自然を保ち、秩序正しく維持されるように、保持の力を働かせてくださっています。

　また社会や世界についても、悪が野放しにならないように保ってくださっています。

　自然界と同様に、神は人間の魂のためにも秩序を設けてくださいました。しかし私達が人間らしく生きることができるように、魂には力を働かせないように、抑制しておられます。自由を与え、自由な意思で行動することを許しておられます。その上で、お互いが幸せに生きていけるようにルールを与えてくださいました。それを人々の良心に書き込んでくださったのです。さらに選ばれた人々には、はっきりと具体的に分かるように律法という形で与えてくださいました。

　その中で最も基本的なものが十戒です。そして、その十戒のなかで、人間関係について命じられているものの第一が「父と母を敬え」です。それは「人を殺してはならない」よりも先に命じられています。従って、父母を敬わないことは殺人よりも重い罪だとも言えるでしょう。

　５．敬うとは

　「あなたの父と母を敬え。あなたの神、主が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである。」（出エジプト記20：12）これは父母を敬えば長生きできるという意味ではありません。神はイスラエルの民を、約束の地に導こうとしておられました。彼らが、この戒めを守るならば、彼らは選ばれた土地に住むにふさわしい人達となるので、選ばれた土地に長く住むことができると神は言っておられるのです。

　それは私達にも当てはまります。彼らの場合、残念ながら、神の戒めを守りませんでした。そして結果としてアッシリアやバビロンといった異郷の地に移されました。

　父と母を敬えという、この戒めをロトの娘婿達が、もし守っていたらどうだったでしょうか。敬うとは具体的にどうすることでしょうか。それが目に見える形で現れるのは言いつけを守る時です。ロトの娘婿達の場合はロトの、一緒に行こうという誘いであり警告を尊重していれば彼らは救われていました。ノアの子供や孫達もノアが説得した時、信じられないけど言われる通りにしようと考えたら生き残ったはずです。

　また親が年をとった時には世話をすること。それが敬うことの具体的な表れです。

　この、神が立ててくださった秩序に従って敬うことは人間社会の最も大切な教えです。その順序は神、夫、妻、そして子供達。その下に人間の周りの自然などの被造物です。そして、それぞれの関係が愛という土台の上に、夫唱婦随の関係、そして子供を慈しむ親と、親の言うことを聞く、つまり言いつけを守る、そして親の世話をする子供達という関係が成り立っている時に、神は正しい家族関係が維持されている、つまり一つの家族であると見做してくださるのです。

　さて、なぜ夫婦は一体でなければならないのか、ということについては、2人はもともと1人だったということを学びました。でも家族についてはどうでしょうか。

　父なる神と子なる神という言い方をする理由については、いつかお話ししようと思いますが、聖書が教えていることは父も子も一人であるということです。

　ルカの福音書16章の金持ちは「父アブラハムよ」と呼びかけていますし、主イエスはダビデの子と呼ばれています。子も孫もひ孫も皆、子と呼ばれるのは、そのためです。

　聖書には1人の人のようになってという表現が時々用いられますが、家族も1人の人のようであることが大事です。そして、そのような人達を神は家族と見なされます。

　その他に、人間の側から見た場合、なぜ神の秩序に従ってお互いに敬意をもって接する関係がなくてはならないのかということを、もう一つの側面から見てみましょう。

　６．聖あるいは聖なるという言葉が被造物に対して使われる場合
　　　の意味

　聖なる、聖なる、聖なるかなという賛美の言葉がありますが、聖なるという言葉が神に対して使われる場合、それは神の御性質を表す言葉です。神は聖なるお方であることを言い表しています。

　では被造物に対して、聖あるいは聖なるという言葉が使われる場合、どういう意味でしょうか。人に対して聖パウロなどと言いますし、神殿にあるテーブルを聖卓と言います。こういう場合、パウロやテーブルの性質が聖であると言っているのでしょうか。

　そうではありませんね。性質について聖なるという言葉は神だけに当てはまります。神だけが聖であり善です。被造物には聖なるものはなく、その性質もありません。

　ではなぜ聖という言葉をかぶせるのでしょうか。

　被造物に聖という言葉がかぶせられる場合、それは神のものである、あるいは神に属するという意味です。聖パウロとは神のものであるパウロという意味です。だからパウロはイエス・キリストのしもべと自己紹介します。自分はキリストに所有されていると言うのです。聖卓は神のものであるテーブル。神のためにだけ用いられるテーブルという意味です。聖餐は神の食事です。

　コリント人への手紙第Ⅰ　7：14には、こう書いてあります。「信者でない夫は妻によって聖められており、また、信者でない妻も信者の夫によって聖められているからです。そうでなかったら、あなた方の子供は汚れているわけです。ところが現に聖いのです。」

　夫や妻が聖められる、また子供が聖いと言っていますが、それは、その人達が、いわゆる聖い人達だと言っているわけではありません。聖パウロも同じで罪人です。でも聖なる人なのです。そこで、この御言葉を言い換えれば次のようになります。

　「信者でない夫は妻によって神のものとされており、また、信者でない妻も信者の夫によって神のものとされているからです。そうでなかったら、あなた方の子供は神のものでないわけです。ところが現に神のものなのです。」

　それは夫婦のどちらかが信者であり、夫婦の関係が律法にかなっているなら２人とも聖なる者である。また子供も両親を敬うなら、聖なる者であるという意味です。つまり、この人達は神のものであるということです。神のものであれば神の国に属しています。

　何度も言いますが、神のものであるかどうかは、夫か妻の少なくとも1人が神のものであり、その上で、家族の内に神が立てられた秩序が正しく働いているかどうかにかかっています。夫は妻と子供を慈しみ、妻は夫を、子供は両親を敬っているかどうかです。それがあれば、その人達は神のものです。

　もし皆さんの家庭で、夫婦や家族に、そのような関係がないと思い当るなら、主に告白し、神の戒めにかなう関係になるように心がけましょう。それを神は喜んでくださいます。