イエスの両親ヨセフとマリアは、過越祭には毎年エルサレムへ旅をしていました。
　イエスが十二歳になったときも、両親は祭りの慣習に従って都に上りました。


　祭りの期間が終わって帰路についた時、両親はイエスがまだエルサレムに
　いたにもかかわらず、旅路を進めてしまいました。



　親類や知人も一緒だったので、てっきりその中にいるものだと思っていたら
　いなかったのです。いくら捜し回っても、見つかりませんでした。


　ヨセフとマリアは、あわてたことでしょう。
　一体どこではぐれてしまったのか？どこに行ってしまったのか？
　あわてて引き返したのです。

　1日の道のりを行った後ですから、引き返すのも同じだけかかったわけです。
　2日の道のりを歩いたことになります。
　1日に30キロから40キロ歩くとして、往復すると60キロから80キロです。

　大変な後戻りを、したことになります。
　当然、どこかで泊りながら戻っているはずです。
　心配で、ほとんど眠れなかったかもしれません。

　普通にエルサレムに引き返すのではなく、あちこち捜しながら
　時間をかけつつ戻ったわけです。相当な労力を使ったはずです。
　１日の道のりを、数日かけて引き返したのかもしれません。


　そしてついに、エルサレムまで戻ってきたのですが、
　都を出てから３日の後に、イエスを神殿で見つけ出します。
　何とイエスは、学者たちの真ん中に座って話を聞いたり質問したりしていたのです。


　わが子イエスを見つけたマリアは驚いて、イエスに語ります。


　まさに、わが子に対するお母さんの語りかけです。
　マリアはこの時、イエスを責めるような言い方をしていますが、
　実のところ、イエスの同行を確認せずに出かけてしまったのは自分たちの方でした。

　イエスが、自分たちと一緒にいることをきちんと確認していれば、
　こんなことには、ならなかったはずでした。
　子どもではなく、子どもを保護すべき両親の責任であったわけです。


　ヨセフとマリアは、エルサレムにイエスを置き去りにして帰路についてしまい
　１日路を行ってしまって初めて気づき、あわてて引き返し
　３日の後に、やっとエルサレムの神殿で見つけ出しました。

　見つけた後も、自分たちの落ち度を棚に上げてしまい
　一方的にイエスを責めるような言葉を、語ってしまっています。
　親がよくやりがちな、子どもに対する対応です。

　ヨセフとマリアは、完璧な聖人でも何でもなく
　私たちと何ら変わらない、失敗もすればあわてもするごく普通の人だったわけです。
　マリアは、受胎告知を受けた時「お言葉どおり、この身に成りますように。」と語っています。


　これは、マリアが聖人君主だったからできたことなのではなく
　普通の人であったけれども、そのように語った言葉なのです。
　ごく普通の人物であったマリアにできるならば、私たちにもできるということです。

　人生を生きる上で、良い生き方をしていきたいと願うなら
　聖書の人物の模範的な行動を、私もできるという思いで模範にすることです。
　もちろん反面教師もいますが、良い模範は積極的に見習っていくことです。

　【今日の聖書】
　イエスが道連れの中にいるものと思い、一日分の道のりを行ってしまい、
　それから、親類や知人の間を捜し回ったが、見つからなかったので、
　捜しながらエルサレムに引き返した。
　ルカによる福音書　２章４４〜４５節