コリントの信徒への手紙二によると、
　当時そこには、自己推薦する者たちがいたことがわかります。
　そのような人々に対して、パウロは手紙で厳しい指摘をしています。

　わたしたちは、自己推薦する者たちと自分を同列に置いたり、
　比較したりしようなどとは思いません。
　彼らは仲間どうしで評価し合い、比較し合っていますが、
　愚かなことです。
　コリントの信徒への手紙二　１０章１２節

　自己推薦する者たちは、仲間どうしで評価し合い、比較し合っており、
　そのようなことを行うことは、実は愚かなことなんだと、
　パウロは指摘しているのです。

　「彼よりも私の方が優秀です」
　「彼よりも私の方が能力があります」
　「彼よりも私の方がよく働いています」

　このような自己推薦は「愚かなこと」だと、指摘しているのです。
　「他人よりも自分が」という主張は、どれも「自己中心」で愛ではないのです。
　他人より自分を優れた者としては、ならないのです。


　兄弟愛をもって互いに愛し、
　尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい。
　ローマの信徒への手紙　１２章１０節

　自分よりも、相手を優れた者と思うべきなのです。

　何事も利己心や虚栄心からするのではなく、
　へりくだって、互いに相手を自分よりも優れた者と考え、
　めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。
　フィリピの信徒への手紙　２章３〜４節

　人の価値は同等であって、何の差もありません。
　単に何ができて、何ができないかが違うだけであって、
　そのことによって、人の価値そのものが変わるということはないのです。

　目が手に向かって「お前は要らない」とは言えず、
　また、頭が足に向かって「お前たちは要らない」とも言えません。
　コリントの信徒への手紙一　１２章２１節

　目と手のできることは、違います。その役割がそれぞれ違うので
　どちらが優れているかなどと、比較することはできないのです。
　単にできることが違っているだけで、価値はどちらも同じなのです。


　いかによく働いたか否かによって、人の価値が変わるということもありません。
　その人の価値は、神に造られた尊いひとりという点で変わることがないのです。
　その人の働きによって、その人自身の価値が変わることはないのです。

　ただし、『いかによく働いたか』に対する『神からの報い』は変わります。
　その人自身の価値は不変ですが、その人の受け取る報いは変わるのです。
　天において、自分の行った働きの報いが、その働きに応じて神から返ってきます。

　人の子は、父の栄光に輝いて天使たちと共に来るが、
　そのとき、それぞれの行いに応じて報いるのである。
　マタイによる福音書　１６章２７節

　いかに自己推薦したところで、自分自身の価値は変わりませんし
　神から受け取る「報いが増える」ということもありません。
　自己推薦はパウロの言うように、愚かなことなのです。

　いかに、神から与えられた使命を果たしたかどうか、
　これが最後に、神によって評価されることになります。
　その報いを望み見て人生を送って行けばよいのです。

　まず、五タラントン預かった者が進み出て、ほかの五タラントンを差し出して言った。
　『御主人様、五タラントンお預けになりましたが、御覧ください。
　　ほかに五タラントンもうけました。』
　主人は言った。
　『忠実な良い僕だ。よくやった。
　　お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。
　　主人と一緒に喜んでくれ。』
　マタイによる福音書　２５章２０〜２１節


　お互いに評価し合っては、なりません。
　最終的に評価を下される、神に任せるのです。
　人が先走って、評価し合ってはなりません。

　神はそれぞれの賜物に応じて、それぞれに使命を与えて
　それぞれの働きに、召してくださっているのです。
　それらの使命や働きを、比較しあってはならないのです。

　大事なことは、神の与えて下さった使命を
　人との比較ではなくて、あなた自身が忠実に果たすかどうかなのです。
　そして、その働きの成果を誇ることも不要です。自己推薦は捨て去るのです。

　最後に神が正しく評価して下さり、正しく豊かに報いて下さるのです。

　信仰がなければ、神に喜ばれることはできません。
　神に近づく者は、神が存在しておられること、また、
　神は御自分を求める者たちに報いてくださる方であることを、
　信じていなければならないからです。
　ヘブライ人への手紙　１１章６節

　【今日の聖書】
　自己推薦する者ではなく、
　主から推薦される人こそ、
　適格者として受け入れられるのです。
　コリントの信徒への手紙二　１０章１８節