１．クレオパたちは「それなのに」と思っていた

　クレオパたちは、一緒に歩くイエスに語ります。
　「ナザレのイエスのことです。この方は、神と民全体の前で、
　　行いにも言葉にも力のある預言者でした。それなのに、．．．」

　それなのに、わたしたちの祭司長たちや議員たちは、
　死刑にするため引き渡して、十字架につけてしまったのです。
　ルカによる福音書　２４章２０節

　てっきり、イエスはメシアとして、
　ローマ帝国の支配を脱却し、神の支配する王国を
　この地に作ってくれるものとばかり思っていたのに．．．

　「それなのに．．．」
　自分たちの予想に反した出来事が起きてしまった。
　まさか十字架刑で、死んでしまうとは．．．

　２．旧約聖書に見られる様々な「それなのに」という出来事

　２．１　モーセ

　モーセは主に従って、ファラオの元に行って民を去らせるように願いましたが
　逆に、ファラオから厳しい命令を受けることになってしまいます。
　主の命令に従ってファラオの元に行ったのに、「それなのに」王からも民からも

　激しく反発されるという状況でした。

　「これからは、今までのように、
　　彼らにれんがを作るためのわらを与えるな。
　　わらは自分たちで集めさせよ。
　　しかも、今まで彼らが作ってきた同じれんがの数量を課し、
　　減らしてはならない。彼らは怠け者なのだ。
　　だから、自分たちの神に犠牲をささげに行かせてくれなどと叫ぶのだ。
　　　　出エジプト記　５章７〜８節

　２．２　アブラハム

　アブラハムは100歳になって、神の約束の子イサクを与えられました。
　しかし、それなのにその子イサクをささげなさいと神に命じられました。
　イサクを通して子孫が増えると言われていたにもかかわらず、

　それなのに、その大事なひとり子をささげなさいと言われたのです。

　神は命じられた。
　「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、
　　モリヤの地に行きなさい。わたしが命じる山の一つに登り、
　　彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」
　　　　創世記　２２章２節

　２．３　ヨセフ

　ヨセフはある時夢を見ます。
　その夢は、やがて自分の兄弟たちが自分にひれ伏すことになるという
　意味を持つ夢でした。

　ヨセフは言った。
　「聞いてください。わたしはこんな夢を見ました。
　　畑でわたしたちが束を結わえていると、
　　いきなりわたしの束が起き上がり、
　　まっすぐに立ったのです。
　　すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、
　　わたしの束にひれ伏しました。」
　　　　創世記　３７章６〜７節

　それなのに彼は、売られてしまいエジプトに連れて行かれてしまいます。

　その他にも、王になるべく油注がれたのに、サウル王に命を狙われたダビデや、
　正しく生きていたのに、苦難を受けたヨブ、
　祈って天から火を下したのに、イゼベルに命を狙われたエリヤ
　キュロス王から、神殿再建工事をするように命じられたのに妨害された人々など

　聖書には「それなのに」という出来事が、数多く記されています。

　３．「それなのに」以降に待っていた逆転の恵み

　３．１　見事に出エジプトしたモーセ

　はじめこそ、ファラオの反発とイスラエルの民からの反発を受けていましたが
　最終的には見事に、奴隷生活を強いられていたエジプトから、
　全員が脱出しています。

　四百三十年を経たちょうどその日に、
　主の部隊は全軍、エジプトの国を出発した。
　　　　出エジプト記　１２章４１節

　３．２　イサクの代わりの献げ物を得たアブラハム

　アブラハムがイサクをささげようとしたその時に、御使いが語りかけます。
　「その子に手を下すな。何もしてはならない。」
　そしてイサクの代わりに、雄羊が与えられたのです。

　アブラハムは目を凝らして見回した。
　すると、後ろの木の茂みに一匹の雄羊が角をとられていた。
　アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、
　息子の代わりに焼き尽くす献げ物としてささげた。
　　　　創世記　２２章１３節

　３．３　エジプトで大臣になったヨセフ

　ヨセフはエジプトで、王に次ぐ位を得て、兄たちと再会します。
　兄たちはヨセフとも知らずに、その前にひれ伏すのです。
　そしてとうとうヨセフは、その身を明かしました。

　ヨセフは、兄弟たちに言った。
　「わたしはヨセフです。
　　お父さんはまだ生きておられますか。」
　兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、
　答えることができなかった。
　　　　創世記　４５章３節

　ダビデは、最終的には王になりますし、
　ヨブの苦難は終わりをつげ、以前にも増して祝福されます。
　エリヤの命は奪われることなく、神殿は見事に再建されました。

　むすび．

　「それなのに．．．」クレオパたちは語りました。
　その後どうなったでしょうか？
　復活されたイエスと気が付き、喜んでエルサレムに戻っていくのです。

　「それなのに．．．」とその時はわからないことがあっても、
　神様のみわざは私たちの思いをはるかに超えて、高く素晴らしいのです。
　「もうだめだ」ではないのです。信じて待つことが必要なのです。

　【今日の聖書】
　わたしの思いは、
　あなたたちの思いと異なり
　わたしの道はあなたたちの道と異なると
　主は言われる。
　天が地を高く超えているように
　わたしの道は、あなたたちの道を
　わたしの思いは
　あなたたちの思いを、高く超えている。
　イザヤ書　５５章８〜９節