ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年9月7日


2014年9月7日 主日礼拝説教
「約束の救い主イエス」〜イエス・キリストの生涯1.キリストの系図〜(マタイの福音書1章1節〜17節)

■はじめに

 今日からイエス様の生涯を福音書からたどっていきます。まず初めはイエス様の系図です。このような系図は、こことルカの福音書3:23−38に出てきます。
 マタイの福音書は、使徒マタイがユダヤ人のために書いた福音書と言われています。ユダヤ人は系図をとても大切に考える民族でした。創世記を読み始めると、5章にはアダムからノアの系図、10、11章にはノアからアブラハムの系図が書かれています。ユダヤ人は系図がないと民族として受け入れてもらえなかったのでした。
 バビロン捕囚にあった時、自分たちはだれの子孫なのかが重要になりました。捕囚から帰ってきてからのことが書かれているエズラ記に、系図を失ってしまった人たちは、ユダヤ人かどうか証明できないばかりか、職にもつけなかったことが記されています。

エズラ記2:59、62「59次の人々は、テル・メラフ、テル・ハルシャ、ケルブ、アダン、イメルから引き揚げて来たが、自分たちの先祖の家系と血統がイスラエル人であったかどうかを、証明することができなかった。……62これらの人々は、自分たちの系図書きを捜してみたが、見つからなかったので、彼らは祭司職を果たす資格がない者とされた。」

 マタイは、イエス様は血こそつながっていませんが、正しい系図のもとに生まれたユダヤ人であることをまず示そうとしたのでした。

■14代ずつ

1アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。

 系図を見ると、「イエス・キリスト」が「アブラハムの子孫、ダビデの子孫」であることが語られています。そして14代ずつ、アブラハムからダビデまで、ダビデからバビロン移住まで、そしてバビロン移住からキリストまでと、14代が載せられています。アブラハムから(3節のユダのふたりの子をパレスとザラを数えて)14人目はエッサイになります。ダビデから数えると10節のヨシヤが14人目、11節のエコニヤから数えると14人目がキリストになります。
 実にきれいにまとめられています。これは、あえて14人にするように細工しているからです。ユダの子のふたり「パレスとザラ」を数えるようにしています。ダビデ以降も、8節のヨラムの次がウジヤとなっています。実際にはヨラムの次は、列王記を読むとわかりますが、アハズヤ、ヨアシュ、アマツヤの3人が入っています。11節のヨシヤの次はエコニヤとなっていますが、エホアハズを抜かしています。12節のサラテルの次は、歴代誌を読むとペダヤが抜けていることがわかります。それぞれ14人になるように工夫しています。
 14とは7の倍数です。7は、ユダヤでは創造の単位として完全数でした。完全数を重ね合わせることによって、キリストが生まれたことが神様の完全な、聖いご計画に沿って生まれてきたことを示そうとしたと思われます。

■ダビデの子

 「ダビデの子」とはどういう意味があるのでしょうか。神様はダビデにこのように約束されました。

サムエル記第2、7:12−13「12あなたの日数が満ち、あなたがあなたの先祖たちとともに眠るとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子を、あなたのあとに起こし、彼の王国を確立させる。13彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしはその王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。」

 しかしダビデ王朝は存続しませんでした。国は分裂し、バビロニヤに滅ぼされ、人々は捕囚の憂き目にあいました。しかし、バビロニヤを滅ぼした次のペルシヤによってユダヤ人たちは国に帰ることができました。その時の指導者が、ダビデの子孫であった12節の「ゾロバベル」でした。しかし、ゾロバベルは王として立つことはできませんでした。イスラエルはペルシヤの一つの州として存続することになりました。
 ペルシヤの次にギリシヤのアレキサンドロス大王の帝国、次にローマ帝国がこの地を支配しました。イスラエルの人々は、これらの国の支配のもと、救い主を待ち望むようになりました。それがメシヤ、ギリシヤ語でキリストと呼ばれました。
 彼らはサムエル記の約束から、キリストはダビデの子孫として生まれると信じていました。そして、実際にダビデの系図の最後にあるヨセフの妻であったマリヤから生まれたのが「キリストと呼ばれるイエス」でした。そのことをマタイの福音書は、最初に系図によって明らかにしました。
 しかし実際には、イエス様はヨセフの子として生まれませんでした。日本語の翻訳ではわかりませんが、ギリシヤ語では「生まれ」ということばはすべて能動態が使われ、最後の16節の「キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった」の「お生まれ」は受動態を使っています。
 新共同訳は、「アブラハムはイサクをもうけ」とし、最後の16節だけ「メシアと呼ばれるイエスがお生まれになった」と訳しています。
 イエス様は、「神によってイエスは生まれさせられた」のでした。
 この人がはたして救い主キリストだったかは、ユダヤ人たちにとって十字架にいたるまで疑問でした。

ヨハネの福音書7:41−43「41またある者は、「この方はキリストだ」と言った。またある者は言った。「まさか、キリストはガリラヤからは出ないだろう。42キリストはダビデの子孫から、またダビデがいたベツレヘムの村から出る、と聖書が言っているではないか。」43そこで、群衆の間にイエスのことで分裂が起こった。」

 いや確かに、このお方は私たちの救い主、待ち望んでいた「ダビデの子」キリストであるとマタイは書いたのでした。

■アブラハムの子孫

 さらにこの系図で、イエス様は「アブラハムの子孫」であったこともユダヤ人たちに思い起こさせました。アブラハムは、カルデヤ(メソポタミヤ)のウルで生まれました。神様は救いの実現のためにアブラハムを選ばれ、こうアブラハムに約束されました。

創世記12:18「あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」

 このアブラハムに告げられた約束の子孫がキリストであったとガラテヤ人への手紙は語っています。

ガラテヤ人への手紙3:16「ところで、約束は、アブラハムとそのひとりの子孫に告げられました。神は「子孫たちに」と言って、多数をさすことはせず、ひとりをさして、「あなたの子孫に」と言っておられます。その方はキリストです。」

■4人の女性

 この系図の中に4人の女性が書かれています。3節の「タマル」、5節の「ラハブ」「ルツ」、6節の「ウリヤの妻」です。しかし、これらの女性たちが堂々とこの最初の系図に載せられたのは意味がありました。それは、何の差別もなく、罪人、異邦人にまで福音が伝えられたことをマタイは示したのでした。
 3節の「タマル」はユダにとって息子の嫁でした。5節の「ラハブ」はイスラエル民族が滅ぼすべき異邦人カナンの女で、しかも遊女でした。「ルツ」は神の民に入れてはならないと言われたモアブ人でした。6節の「ウリヤの妻」は、ダビデが姦淫を犯した相手でした。
 載せられているユダヤの男の王様も、すべていい王様だったわけではありません。列王記、歴代誌を読むとわかりますが、神様からのあわれみによって、ダビデから始まった王国をなんとか治めることができた王様たちばかりでした。そのような系図の中で、神様がイエス様を生まれさせました。
 預言を成就するために、確かにこのイエス様が救い主ですよとわからせるために、ダビデの家系を使って人間の世界に介入されたのでした。

■ルカの系図

ルカの福音書の系図(3:23-38)を見ておきましょう。ルカはイエス様から始めて、さかのぼって系図を書いています。しかも、アブラハムを越えて、アダム、神まで続く系図を載せています。ルカは、救い主が人の子であるが、また神の子であることを示そうとしたのでした。
 またルカの系図は、イエス様がこの時「およそ30歳」であったことを知らせます。詳しく読んでいくと、大分マタイと名前が違っていることがわかります。

■約束の救い主

 イエス様は、「アブラハムの子孫、ダビデの子孫」としてお生まれになり、ご自分の民を、その罪から救うために来てくださいました。その刑罰として、私たちの代わりに十字架につけられました。神様は罪のないイエス様を、私たちの代わりに罪人とされ、十字架によってさばかれました。こうして私たちの救い主キリストとなってくださいました。そのことをマタイの福音書はこの系図から書き始めました。
 これから、アブラハム、ダビデの子孫として生涯を送られたイエス様の足跡をたどっていきたいと思います。


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