ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年5月11日


2014年5月11日 主日礼拝説教
「望みを神にあって抱いています」(使徒の働き24章1節〜16節)

■はじめに

 パウロがエルサレム神殿に異邦人を連れ込み、神殿を汚したという誤解から大騒ぎになり、パウロはエルサレムに駐屯していたローマ軍に逮捕されました。捕らえられたパウロは、連れて行かれる途中、千人隊長に頼んで神殿に集まっている人たちに話をしました。それはパウロが救われた証しでした。
 そこでも騒ぎが大きくなり、千人隊長ルシヤは兵営に連れて行き、鞭打ってパウロを尋問しようとしました。その時パウロがローマ市民権を持っていることが明らかにされました。
 その翌日です。千人隊長はユダヤ議会を召集し、何が原因で暴動が起こったかを調べようとしました。しかし、パウロが「死者の復活という望みのことで、さばきを受けているのです」と言うと、議員のパリサイ人とサドカイ人が分裂する騒ぎになり、審議ができなくなりました。またまた、パウロはローマの兵営に連れて行かれました。
 その夜、パウロにイエス様が現れて、「あなたはローマでも証ししなければならない」と、パウロがローマに行くことを示されました。
 次の日、騒動が起こって3日目です。ユダヤ人の中に、パウロを殺すまでは飲み食いしないと誓いあった40人以上のグループがいて、彼らはパウロを兵営から連れ出し、そこを襲おうと相談しました。
 その噂を聞きつけたパウロの甥がパウロに知らせ、また千人隊長に知らせたので、その日のうちに、夜中にパウロを総督ペリクスのいるカイザリヤに護送することになりました。それは、エルサレムにいた兵士の半分を投入し、一気に100キロ以上を駆け抜けるという大掛かりなものになりました。
 翌日、無事パウロはカイザリヤに着き、カイザリヤにあったヘロデの官邸に入れられ、保護されました。
 さて、パウロがカイザリヤに送られてきて5日目に、カイザリヤのペリクス総督の前でパウロの裁判が始まりました。

■テルトロの訴え

1五日の後、大祭司アナニヤは、数人の長老およびテルトロという弁護士といっしょに下って来て、パウロを総督に訴えた。

 やってきたのは「大祭司アナニヤ」(彼はユダヤ議会でパウロの口を打つように命じた大祭司でした)と議会の議員であった「数人の長老」、それに「テルトロ」という弁護士でした。彼は、ローマ法とユダヤ人の律法に精通していたと思われる人物でした。
 2節から4節までは、テルトロは慣例に従って、外交辞令を交え、総督を賞賛することばであいさつをします。しかしこうは言っても、実際には、総督ペリクスの在任期間中はユダヤの治安が悪化する一方であったと言われています。

5この男は、まるでペストのような存在で、世界中のユダヤ人の間に騒ぎを起こしている者であり、ナザレ人という一派の首領でございます。

 これがパウロに対する告発でした。3点です。1)ペストのような存在であって、疫病のように有害な者である。2)世界中(ローマ社会)のユダヤ人の間で騒ぎを起こした。3)「ナザレ人という一派の首領」である、でした。
 異邦人の中では「キリスト者、クリスチャン」と呼ばれるようになっていましたが、ユダヤ人社会では、侮蔑的に、ナザレという田舎から出たイエスが広めたということで、「ナザレ派」と呼ばれていたようです。

6この男は宮さえもけがそうとしましたので、私たちは彼を捕らえました。

 ここから、今回のパウロの具体的罪について述べます。信仰とユダヤ民族の象徴である神殿を汚そうとしたことでした。最初は「汚した」ということで騒ぎが起こり、捕らえられたのですが、この訴えでは「けがそうとしました」と変わってきています。

■パウロの弁明

 それに対してペリクスがパウロに話すようにうながし、10節からパウロが弁明します。
 パウロも、テルトロと同じように、総督に対する賛辞をもって始めました。それから、訴えられたことについて答えていきます。

11お調べになればわかることですが、私が礼拝のためにエルサレムに上って来てから、まだ十二日しかたっておりません。12そして、宮でも会堂でも、また市内でも、私がだれかと論争したり、群衆を騒がせたりするのを見た者はありません。

 パウロは、まず、「ペストのような存在だ」と「世界中、ローマ社会のユダヤ人の間で騒ぎを起こした」ことについて弁明しました。
 自分がエルサレムに滞在していた期間はわずか「十二日」です。この短い期間、捕まるまでの5日間ほどで人々を扇動して、エルサレムで秩序を乱すようなことは行わなかったし、まして世界中で騒ぎを起こしている張本人になったことも、論争もしていないし、それは全くあり得ないことでした。
 また最近に起こったことなので、その証人をエルサレムで探すことは簡単なことでした。パウロは神殿で礼拝をしていただけでした。

14しかし、私は、彼らが異端と呼んでいるこの道に従って、私たちの先祖の神に仕えていることを、閣下の前で承認いたします。私は、律法にかなうことと、預言者たちが書いていることとを全部信じています。

 次にパウロは、「ナザレ人という一派の首領」である、ということについて弁明しました。パウロは、自分が信じ伝えているものは、大多数のユダヤ人にとっては「異端」と呼ばれているユダヤ教分派に属していると考えられていると語りました。しかしそうであっても、「この道」はユダヤ人が信じている同じ聖書に基づいており、ユダヤ人たちの先祖の神を正しく礼拝している者たちでした。
 「この道」はイスラエルの宗教とつながっていますが、ただし、神がその御子イエスをお遣わしになり、そのイエス様が人間の罪の身代わりとして十字架で死に、そしてよみがえった救い主であること、そのイエス様を主であり、神として礼拝していました。

15また、義人も悪人も必ず復活するという、この人たち自身も抱いている望みを、神にあって抱いております。

 パウロは、「義人も悪人も必ず復活する」という、ユダヤ教のパリサイ人たちが信じていることと同じ希望を抱いていることを語りました。

16そのために、私はいつも、神の前にも人の前にも責められることのない良心を保つように、と最善を尽くしています。

 パウロの思いは、神を愛し人を愛するようにと教えたイエス様に従って歩んでいました。パウロは、この裁判の場でも、イエス・キリストが復活されたことを伝えようとしていました。

■望みを神にあって

 パウロは、15節「望みを、神にあって抱いております」と語りました。それは、「義人も悪人も必ず復活するという」ことでした。この、すべての人が復活するという教えが、旧約聖書の預言書に、またイエス様のことばにありました。

ダニエル書12:1−2「1その時、あなたの国の人々を守る大いなる君、ミカエルが立ち上がる。国が始まって以来、その時まで、かつてなかったほどの苦難の時が来る。しかし、その時、あなたの民で、あの書にしるされている者(イエスを救い主として信じた者の名が記されている)はすべて救われる。2地のちりの中に眠っている者のうち、多くの者が目をさます。ある者は永遠のいのちに、ある者はそしりと永遠の忌みに。」

 イエス様はこう言われました。

ヨハネの福音書5:28−29「28このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞いて出て来る時が来ます。29善を行った者(イエスを信じた者)は、よみがえっていのちを受け、悪を行った者は、よみがえってさばきを受けるのです。」

 それは、将来下される死後のさばきでした。パウロが復活のことを話したのは、総督ペリクスが、「この道」(22節)に相当詳しい知識を持っており、そのペリクスに伝道しようとしていたからでした。ペリクスは「しかし、パウロが正義と節制とやがて来る審判とを論じたので、ペリクスは恐れを感じ、「今は帰ってよい。おりを見て、また呼び出そう」(25節)と言い、パウロのもくろみは、このときは成功しませんでした。しかし、ペリクスの心に福音の種がまかれたことは事実でした。それ以後のことは、神様の御手にゆだねるしかありません。
 今日、私たちは、どのような時にもキリストの復活を宣べ伝えたパウロのことば、「望みを、神にあって抱いております」をいただいて歩みだしたいと思います。


ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年5月11日