ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2010年1月17日


2010年1月17日 主日礼拝説教
「罪のないお方が十字架に」(マルコの福音書15章1節〜15節)

■はじめに
 ユダヤ教の指導者たちは、イエス様を捕らえ裁判にかけました。ご自分を神の子としたイエス様を死刑にする判決が下されました。先回は、その裁判と同時に起こっていた出来事を見ました。ペテロはイエス様を3度も知らないと言ってしまいましたが、イエス様がペテロを赦し、もう一度立ち上がらせてくださいました。
 ユダヤはローマの属国でしたので、死刑を執行する権利がありませんでした。そこでイエス様を、当時ユダヤを支配していたローマの総督ピラトのもとに送りました。

■ピラトの前で

1夜が明けるとすぐに、祭司長たちをはじめ、長老、律法学者たちと、全議会とは協議をこらしたすえ、イエスを縛って連れ出し、ピラトに引き渡した。

 祭司長たちは、ローマへの反逆罪でイエス様を訴えました。

ルカの福音書23:2「そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」」

 しかし、その王はこの世の王ではなく、全く違う意味でした。その訴えを受けて、ピラトはイエス様に問いました。

2ピラトはイエスに尋ねた。「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」イエスは答えて言われた。「そのとおりです。」

 しかし、イエス様は積極的に答えませんでした。原文は「あなたは言っている」で、「あなたがそう言われるならそうでしょう」という感じの答えです。マルコの福音書に記されているピラトの尋問とイエス様の答えはこれだけです。ヨハネの福音書には、この王国と王についてのやり取りが出ています。

ヨハネの福音書18:36−37「イエスは答えられた。「わたしの国はこの世のものではありません。もしこの世のものであったなら、わたしのしもべたちが、わたしをユダヤ人に渡さないように、戦ったことでしょう。しかし、事実、わたしの国はこの世のものではありません。」そこでピラトはイエスに言った。「それでは、あなたは王なのですか。」イエスは答えられた。「わたしが王であることは、あなたが言うとおりです。わたしは、真理のあかしをするために生まれ、このことのために世に来たのです。真理に属する者はみな、わたしの声に聞き従います。」」

 このようなやりとりのあと、ピラトは「この人には何の罪も見つからない」と判断します。しかしピラトは、無罪であると知りながらイエス様をすぐには釈放しませんでした。それは、ユダヤ人の反感を恐れたからでした。

■口を開かないイエス様

4ピラトはもう一度イエスに尋ねて言った。「何も答えないのですか。見なさい。彼らはあんなにまであなたを訴えているのです。」5それでも、イエスは何もお答えにならなかった。それにはピラトも驚いた。

 どう尋問しても何も答えられないイエス様。それは、父なる神様のみこころ従うという思いと、聖書のことばのとおりに従うとする思いからくる沈黙でした。

イザヤ書53:7「彼は痛めつけられた。彼は苦しんだが、口を開かない。ほふり場に引かれて行く羊のように、毛を刈る者の前で黙っている雌羊のように、彼は口を開かない。」

 ピラトはイエス様を釈放することを提案します。

ルカの福音書23:14−16「こう言った。「あなたがたは、この人を、民衆を惑わす者として、私のところに連れて来たけれども、私があなたがたの前で取り調べたところ、あなたがたが訴えているような罪は別に何も見つかりません。……見なさい。この人は、死罪に当たることは、何一つしていません。だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」」

 しかしユダヤ教指導者は、何としてもイエス様を死刑にしたかったのです。

■イエスかバラバか
 そこでピラトは、次にユダヤ教指導者ではなく民衆の声を聞こうとしました。イエス様は民衆に人気がありました。1週間前にイエス様がエルサレムに入城した時は、ユダヤ教指導者たちの機嫌が悪くなるほど、民衆は喜び、「ホサナ、ホサナ」と歌ってイエス様を迎えました。

6ところでピラトは、その祭りには、人々の願う囚人をひとりだけ赦免するのを例としていた。7たまたま、バラバという者がいて、暴動のとき人殺しをした暴徒たちといっしょに牢に入っていた。

 ピラトは、毎年、過越の祭りの時に一人の死刑をとりやめる恩赦を与えていました。その日、3人の犯罪人の十字架刑が予定されていたのでしょう。そのひとりがバラバであったと思われます。

8それで、群衆は進んで行って、いつものようにしてもらうことを、ピラトに要求し始めた。

 ピラトは当然、その声はイエス様を釈放したいという願いと思ったでしょう。

9そこでピラトは、彼らに答えて、「このユダヤ人の王を釈放してくれというのか」と言った。10ピラトは、祭司長たちが、ねたみからイエスを引き渡したことに、気づいていたからである。

 ピラトは、「このユダヤ人の王を釈放してくれというのか」と、イエス様の無罪と釈放を群衆の手にゆだねました。

11しかし、祭司長たちは群衆を扇動して、むしろバラバを釈放してもらいたいと言わせた。

 思いがけず群衆から上がった声は「バラバ」でした。バラバの罪は、ローマ兵を殺した罪であったと考えられています。それでバラバは民衆に人気があったのかもしれません。
 イエス様は無罪で釈放、バラバは恩赦で釈放。ピラトは、二人とも釈放と決定すればよかったのです。ところが、イエス様かバラバかのどちらかという思いがけない展開になってしまいました。どちらかを釈放し、どちらかを死刑にしなければならなくなったピラトはもう1度呼びかけました。

12そこで、ピラトはもう一度答えて、「ではいったい、あなたがたがユダヤ人の王と呼んでいるあの人を、私にどうせよというのか」と言った。13すると彼らはまたも「十字架につけろ」と叫んだ。

■民衆の声
 民衆の声はますます大きく、熱狂的になっていきました。十字架を叫ぶ圧倒的な声に、すべてはかき消され、ピラトは沈黙せざるをえなくなりました。

14だが、ピラトは彼らに、「あの人がどんな悪い事をしたというのか」と言った。しかし、彼らはますます激しく「十字架につけろ」と叫んだ。

ヨハネの福音書19:12「ピラトはイエスを釈放しようと努力した。しかし、ユダヤ人たちは激しく叫んで言った。「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王だとする者はすべて、カイザルにそむくのです。」」

 ピラトは、イエス様を釈放すれば、カイザルに謀反を働いた者に味方することになるとまで脅され、ついに彼らの声に屈しました。

15それで、ピラトは群衆のきげんをとろうと思い、バラバを釈放した。そして、イエスをむち打って後、十字架につけるようにと引き渡した。

■罪のないお方が十字架に
 ピラトは、「イエス様は無罪」であり「イエス様を釈放したい」と願いました。それを「祭司長たち指導者と群衆」が拒んで、十字架につけるよう要求しました。祭司長たちは、以前からイエス様を殺そうと狙っていました。しかし、ここに至って群衆も扇動され、イエス様の十字架刑を願ったのです。
 イエス様は何の罪もありませんでした。罪のないお方が十字架にかかる。それは、罪のないイエス・キリストに私たちの罪を転嫁するためでした。転嫁とは、なすりつける、押しつけることです。

コリント人への手紙第2、5:21「神は、罪を知らない方(キリスト)を、私たちの代わりに罪とされました。それは、私たちが、この方にあって、神の義となるためです。」

 イエス様が普通の出生による人の子であったならば、イエス様は生まれながらにして罪を持っていました。そのために、イエス様は処女マリヤから聖霊によって身ごもるという奇蹟によって生まれたのでした。
 イエス・キリストは神であり、私たちと同じような人でしたが、生まれながらの原罪はなく、また現実の罪を犯されませんでした。そのお方が十字架にかかって死ぬことになりました。それは、私たちの罪が罰せられるところを、代わりにイエス様が神の刑罰を受けてくださるためでした。そのことを信じる者は、罪赦され神の子とされるのです。
 ペテロは語りました。

使徒の働き3:19「そういうわけですから、あなたがたの罪をぬぐい去っていただくために、悔い改めて、神に立ち返りなさい。」

 パウロも勧めました。

使徒の働き16:31「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたもあなたの家族も救われます。」

 神様は、イエス様を信じたいと願う人を喜んで迎え入れてくださいます。そしてイエス様の十字架によって私たちの罪をすっかり赦してくださいます。罪なきお方が私たちの代わりに十字架にかかったことを今日も覚え、感謝して歩みたいと思います。


ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2010年1月17日