ポティファルの妻
ヨセフを、
冤罪(濡れ衣のこと)によって監獄に閉じ込めたポティファルの妻は
自分たちの奴隷だったヨセフが、エジプト全国のつかさとなって、
ファラオの次の位に
就いた時、どういう心境だったでしょうか?
ヨセフは、彼女のついた嘘によって長い間獄に入れられていたわけです。
そのヨセフが自分の夫よりも、はるかに高い地位に
就いて権威を与えられたわけです。
ヨセフは、エジプトの民を裁くことも可能になっているのです。
ファラオは料理役の長の首をはねて、その体を木に掛けることもできたのです。
それと同じ権威が、ファラオからヨセフにも与えられていたのです。
彼女は、気が気ではなかったと思います。
ヨセフに裁かれて、自分も料理役の長のように殺されてしまうのではないか?
殺されないまでも、自分の嘘が夫にばれて家から追い出されてしまうのではないか?
彼女は日々、恐怖に
苛まれていたのではないでしょうか?
恐怖で夜も寝られない、日中も何も手が付けられない、
そんな様子が目に浮かびます。頭を掻きむしりながら嘆き歩く姿が、目に浮かぶのです。
夫ポティファルが心配して「どうしたんだ?」と問いかけても、何も答えることもできず
彼女はひとり、苦しみ悶えていたのではないでしょうか?「あー何ていうこと!」
しかし、ヨセフが彼女を裁いたとは聖書には記されていません。
ヨセフが裁かなかったとしても、彼女は相当苦しんだはずです。
ヨセフが彼女に何もしなければしない程、それだけ彼女の苦しみは
長く続いたのではないでしょうか?
「私を裁くのなら早く裁いてちょうだい!いつまでこんなに苦しまなければならないの!」
彼女がヨセフに言い寄っていた時、夫に嘘をついてヨセフを牢に入れるようにした時
まさか奴隷のヨセフが、王の次の位に
就くなどとは夢にも思わなかったことでしょう。
それがこともあろうに、王の次の位になってしまった!
もはやどうしようもなかったわけです。
彼女は、罪の報いを刈り取ることになってしまったのです。
もし彼女が悔い改めていたとしたら、全く違う結果だったことでしょう。
けれどもヨセフはファラオの前に立つまで、監獄の中にいたわけです。
ポティファルの妻の嘘が、それまでまったくばれていなかったわけです。
彼女がその時まで、悔い改めていなかったことは自明です。
彼女はヨセフの突然の就任に、度肝を抜かれたはずです。
彼女がそれを聞いた時、顔面蒼白になったのは間違いないのではないでしょうか?
「あー何ていうこと!」彼女の叫び声が聞こえてくるようです。
罪の報いは、何年も後になってやってくることもあるのです。
ばれることはないだろうから、裁く人もいないだろうからと言って
簡単に罪に身を委ねてしまうと、後になって大変なことになってしまうのです。
【今日の聖書】
ヨセフの方を向いてファラオは言った。
「神がそういうことをみな示されたからには、
お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。
お前をわが宮廷の責任者とする。
わが国民は皆、お前の命に従うであろう。
ただ王位にあるということでだけ、わたしはお前の上に立つ。」
創世記 41章39〜40節