アダムの苦しみ
1.最初の人アダムの家にふたりの息子が生まれた
アダム家には当初ふたりの息子がいました。
長男カインと次男アベルです。
さて、アダムは妻エバを知った。
彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。
彼女はまたその弟アベルを産んだ。
アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
創世記 4章1〜2節
子供が生まれ元気に育ってくれることは、親にとっては喜びです。
ふたりの息子たちが元気に健やかに育ったことは、
アダムとエバ夫婦にとっても、大きな喜びだったに違いありません。
2.アダム家に家庭内殺人事件が起こった
しかしあろうことか、長男カインが弟アベルを妬み
野原で殺してしまうのです。
カインが弟アベルに言葉をかけ、
二人が野原に着いたとき、
カインは弟アベルを襲って殺した。
創世記 4章8節
そしてカインは主から裁きを受け、呪われる者となってしまい
地上をさまよい、さすらう者となってしまいます。
カインは主の前を去り、エデンの東、
ノド(さすらい)の地に住んだ。
創世記 4章16節
アダム家は、非常に大きな悲しみに包まれたことでしょう。
アベルが、兄カインに殺害されてしまい、
カインも呪いを受けて家を出て行き、アダムとエバの二人が残されるのです。
3.エデンから追い出されたアダムに更なる苦しみが加わった
アダムとエバには、もともとエデンにおいて犯してしまった罪に対する、
自責の念があったことは、確かでしょう。
「あの時、あの実を食べてさえいなければ、...」
極上の住まいであったエデンから追い出され、額に汗して働かなければならなくなり
妻には出産の苦しみが増し加わり、さらには人生がやがて死で終わるという
絶望が待ち受ける人生を、歩まなければならなくなってしまった、
エデンとは大違いの人生を、苦しみながら生きなければならなくなったのです。
エデンを知っていたが故、その差の大きさを嫌と言うほど思い知らされていたはずです。
私たちエデンを知らない者よりも、ずっとずっと苦しみは大きかったはずです。
罪を犯してしまったことに対する後悔と、
もはや元の状態に戻ることのできない絶望、
毎日続く額に汗して働く労働。
それらの絶望的苦しみを抱えながら、さらに大きな苦しみである
「自分の育てた子が、自分の育てたもうひとりの子を殺してしまう」
という苦しみが加わったのです。どれ程苦しかったことでしょうか?
むすび.アダムは乗り越えた
カインは家を出ていき、アベルは死んでしまい
カインとアベルの二人の息子を失ったアダムは、絶望のあまり
人生を放棄してしまったかと言うと、そうではありませんでした。
乗り越えています。
再び、アダムは妻を知った。
彼女は男の子を産み、セトと名付けた。
カインがアベルを殺したので、
神が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。
創世記 4章25節
あんなひどい状況に陥ったにもかかわらず、見事に乗り越えているのです。
そしてセトが生まれ、アダムの系図が続いてゆくのです。
セトが生まれていなければ、ノアも生まれておらず、
現在生きている、世界中の誰ひとり存在していなかったのです。
アダムがこの危機を乗り越えたからこそ、
今の私たちが、今ここに生きているのです。
【今日の聖書】
主は助けを求める人の叫びを聞き
苦難から常に彼らを助け出される。
詩編 34編18節