パソコンを使ったデータ超整理法


目 次


スクラップ試行錯誤の日々

かつて流行したマーフィーの法則にこんな言葉があります。

「捜す書類はいつもない!」


確かに、「あのスクラップはどこにいったっけ … 」と探し回った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

「集積したデータを瞬時に取り出して、メッセージ作成などに生かせないものか」というのは、私の長い間の願いの一つでした。それでファイルキャビネットを買ってみたり、スクラップ・ブックを使ってみたり、「〜 式整理法」などを試したりと試行錯誤を繰り返していました。しかし図書館で、

林晴比古著「パソコン書斎整理学」
(東京: (株)ソフトバンク、1990)


という本に出会って、この本から学んだ方法を、次のようなデータ管理に応用し、懸案は一挙に解決しました。

以上の他にも、日常生活や聖書研究、伝道の上で必要性が出てきたものは思いつくままに気軽に作ってきました。そしてその結果、これまでストックしてきたデータで捜し出したいものは、ほとんど数秒以内、遅くとも数分以内に見つかるようになりました。以前のように、記憶を頼りに、何十分も、時には何時間、何日もイライラしながら捜し物をするということが無くなったのです。

毎日の生活で役立っているのは住所録とか、記事スクラップ、過去のメッセージ、日録、着想集などで、記憶力の劣悪な私にはこれらは手放せません。昨年のホーム・ページ製作の時に一番役に立ったのは、週報の蓄積資料でした。これは、改めて見直してみると、もっと活用できることが分かったものの一つです。

さて、林晴比古さんの本から学んだ効果的なデータ整理方法を、実際やってみた経験を交えながらご紹介してみたいと思います。まずはじめに、林さんの言っておられることを見て下さい。きっと共感するところがあると思います。

われわれは書斎の整理整頓という言葉に、本当は何を求めているのでしょうか。それは簡単なことです。答は一つしかありません。それは“捜したいものがすぐに見つかる”ということです。実はこれが書斎やビジネスの現場には一番大切なことです。たとえば、捜したいものが30秒で必ず見つかるようになっていれば、仕事の効率は格段に向上します。
(林晴比古「パソコン書斎整理学」p.14)

ところが現実には冒頭のような「捜す書類はいつもない」という事態が生じるのはなぜか?林さんは原因について次のように言っておられます。

(1)整理整頓しないから
 
これは当然のことです。整理整頓しなければ、混乱してくるのは当たり前です。ところが、本当はもっと重要なことがあります。それが第二の原因で、
(2)整理の方法が分からないから
 ということです。たいていの人が頭の中では分かったつもりでいます。大人ですから、そんなことは分かっていると信じています。だからこの第2の原因はあまり認識されません。しかし、重要なのはこの第2の原因の方なのです。これを解決しないまま、「きれいに整理整頓しろ!何度言ったら分かるんだ」と言っても無理なのです。精神論を何度聞いても役に立ちません。
 この問題が解決していないと、いくら整理整頓しても一時しのぎです。実はそれは整理しているのではなく、“とりあえずどこかに置くだけ”なのです。だから置場所などすぐに忘れてしまい、すぐに元の混乱状態に戻ります。(林晴比古「パソコン書斎整理学」p.4)

長続きする超整理法の要件

ではどうすればいいのか?一言でいうと、「速い、安い、うまい」データ管理があれば良いのです。つまり

もちろんそんなうまい方法がそう簡単にあるはずはありません。どこかで誰かが“縁の下の力持ち”的な汚れ仕事を負担しなければならないのは当然です。表面上のオペレーションを単純にするためには、どこかに複雑な手間暇のかかる仕組みが必要になります。そこでパソコン。つまり「汚れ仕事をパソコンに押しつけてしまう」というわけです。そこにパソコン活用の道が開けてきます。この3拍子そろったデータ管理法というのが、パソコンによる「テキストファイルを使ったベタ管理」です。


エディターが便利

市販のワープロソフトや、データ・ベース・ソフトでは、ファイルが特殊な形式になってしまうため、素早いデータ検索には向きません。というのは、その度毎にわざわざそのソフトを立ち上げなければならないし、またデータ全体を他のソフトウェアに使えるようにするためには、データ変換という面倒な作業をしなければならないからです。

これに対して「テキストファイルを使ったベタ管理」なら、非常に柔軟性があって、しかも、いい加減な入力でも使えます。どんなワープロソフトでも読み込めますし、作成できるのですが、一番便利なのはエディターです。それもウィンドウズなどに付属している「メモ帳」(note pad)などでは容量が小さいので、一年分のデータを一つのテキスト・ファイルにしようとしてもできません。できれば、「 … エディター」という名前の付いているものが便利だと思いますが、絶対にそれでなければならないというわけではないので、とりあえずは手持ちのワープロソフトでも構いません。とにかく始めることです。あとは何とかなる方法が以下に述べる方法なのですから。


テキストファイルを使ったベタ管理

さて、「ベタ管理」について林さんは次のように言っています。

「ベタ管理」つまり、分類も50音順管理もしないのです。必要な書類は袋に入れて、ただただ並べていくのです。これなら分類で頭を悩ますことも、50音順のインデックスを作る必要もありません。単純このうえないシステムです。でもそう言われると、読者は「どうやって検索するのだ?」と言うでしょう。それに対する答は、「端から全部捜していく」ということになります。これが一番管理が簡単で、検索も単純な方法なのです。
 しかしこう述べると当然「バカなことを言うな。それでは時間がかかってしようがないじゃないか」と言う声が出てくるでしょう。そうです。しかしそこがポイントです。「時間がかかってしようがないこと」はパソコンに任せてしまえばいいのです。汚れ仕事はパソコンに押しつけるのです。そもそも分類などなぜやるかというと、人間の目による検索を簡単にするためです。それをパソコンにやらせようというのですから、分類そのものが不要になってしまうのです。

(林晴比古「パソコン書斎整理学」p.26)

ただ、これを一般に推奨されている紙袋を使った方法によるとすれば、「増えていく袋をどこに置くか」という新たな問題が起きてきます。これをどう解決するのかというと、スクラップ整理などの場合に林さんはクリアーファイルを奨めています。


クリア・ファイルの活用

クリアファイルはビニール製の透明ポケットだけからなるノート型のファイルです。透明ですから、ここに差し込んだものは上から見ることができます。このクリアファイルはいろいろな文具メーカーから市販されていますが、経験上A4サイズで60〜80ポケットのあるものが扱いやすいようです。それは、一年が大体50余週あることからくるものです。

クリアファイル60枚というと、これだけで袋60枚に相当するので、大変な置場所の節約です。あまり厚いと、フルに資料を入れたとき、クリアファイル全体が大きく膨らんでしまいますし、またあまり薄いと何冊にもなって、管理が面倒になります。自分の管理する資料の数に応じて、適当なクリアファイルを準備して下さい。以下は私も実際にやってみて納得した方法です。


クリア・ファイルのページの割り振り

まず各ページの右肩に黒の油性ペンで、連続した管理番号を書き込みます。それは連続番号でもいいですし、資料によっては日付や週などの範囲を書きます。この時注意することがあります。それは最初のクリアファイルを0番として、何も入れないことです。この0番ファイルは後でプリントアウトした目次を入れるのです。こうすると、パソコンが万一故障したとか、停電の時とか、そうした不測の事態にも、パソコンなしで対処できるからです。またわざわざパソコンを立ち上げるまでもないというときも、プリントアウトしたものがあればそれで間に合います。

さて、管理番号としては、1から通し番号をふれるものは、それでいいとして、そのほか日付を確定できるものは適当な範囲の日付を書きます。例えば、98年1月1日から10日までのスクラップを一つの袋に入れたいときは、“980101−10”と書き、次のページには“980111−20”と書くわけです。そしてこの間にスクラップしたい資料は日付を書いて、どんどんこの袋に放り込みます。


テキスト・ファイルへの記入様式

一方、パソコンの方にはクリアファイルを管理できるファイルを作ります。その様式は次のようなものです。

“発生年月日−識別文字 内容明細”
次の例を見て下さい。

970117-L 津上光子(イスラエル旅行の途中から、“死海のロトの塩柱”絵はがき)
970118-Q 社説「和平進展へ更に対話を」ヘブロン撤退は大きな成果 イスラエル パレスチナ問題
970118-Q 子育てがわからない 田中喜美子(11)「個」認めない親 裏目にでる日本の伝統 生きる力つぶす封建社会の名残
970120-L 東北大教育学部(大学教育開放講座「パウロ思想の再検討−キリスト教思想の源流(2)−」の案内
970121-R 吉岡社会福祉センター郵便振替払込金受領証
970121-D 「権力と権威の異同について」
970122-P CABIN製品総合カタログ

「年月日」はその資料の重要な要素です。統計データの中には古過ぎると陳腐になってしまうというものもあるからです。
また「識別文字」には、出典の場合もありますし、データの種類を表す場合もあります。それを見れば、その資料がどのようなものなのかが分かればいいのですから、自分で好きなように決めます。例えば次のように。

A〜朝日新聞, B〜BOOK, C〜クリスチャン新聞, D〜Diary, E〜etc, I〜アイディア, K〜キリスト新聞, L〜手紙, M〜Memo, P〜パンフレット類, Q〜河北新報, R〜領収書, Z〜雑誌

ただし、テキスト・ファイルでデータを管理するときは、分類ということは、はっきり言って不必要ですから、これにとらわれる必要はありません。後になって、自分でどの識別文字がどんな意味なのかが混乱するようになっては面倒ですから、厳密である必要はないのです。あくまで自分のための必要最小限の便宜に考える方がいいと思います。識別文字を忘れたら、略号を使わずに書いてもいいのです。データ・ベース・ソフトを使ってのデータ管理とはちがって、テキスト・ファイルの場合は分類は厳密である必要はないのです。

そもそも分類とは、人間の目による検索作業を楽にするために考え出されたものです。コンピュータ化した場合、パソコンは文句を言わずに片っ端から記事検索をしてくれます。「片っ端から捜す」というと非効率のように見えますが、パソコンは人間に比べて非常に高速に検索しますから、そんな心配をすることはないのです。


テキスト・ファイルへの記事見出しの書き方

次に、記事内容をどう書くかということがあります。これは検索のためのキーワードなのですから、あらゆる可能性を考えなければなりません。しかし、そのようなキーワードを記事の中から捜してきて、それを入力するのは大変手間のかかることで、現実的ではありません。一番いいのは記事の見出しをそのまま入力するということです。何しろ、その記事を書いた人が頭を振り絞って考えているのですから、いい加減なわけがないのです。そして確かに見出しには短い言葉で5W1H、特に「誰が何をした」ということが、簡潔に表現されていることが多いのです。それでも不足の時は、自分が適当と思う言葉や感想でも、何でも入力していいのです。

こうして作ったテキストはクリアーファイルの袋が無くなるまで、一つのファイルとします。自分で分かる適当なファイル名をつけてどんどん記入していきます。

私はスクラップの場合は年度毎にし、そこにスクラップ記事でも、手紙でもパンフレットも薄手であればそのまま、メモも領収書も何でも放り込みます。どうせパソコンが片っ端から捜し出してくれるので、迷わず放り込んでいいのです。簡単さ、気軽さが長続きの秘訣なのですから。

クリア・ファイルを使ったこの方法でほとんどのスクラップは処理できます。問題は紙切れと違ってかさばる書籍や体積のあるものですが、この場合はクリア・ファイルを使えないので、代わりに段ボールを使い、パソコンにはクリア・ファイルの場合と同様に、どの箱に何が入っているかを記録して置くわけです。その具体的な方法に移る前に、ここでパソコンを使った検索について述べましょう。


パソコンを使ったデータの検索

どのワープロやエディタにも「検索」機能がついています。これを使って一つづつ該当するデータをソフトに検索させることができます。中には該当するデータを一覧にして表示してくれ、しかも「タグ」と呼ばれる、データの所在をつけてくれるものもあります。“tug”は「グイッと引く」という意味ですが、その言葉の通り、タグにカーソルを置いて指定されたキーを押すと、そのファイルまで引っぱり出してくれるスグレモノもあります。

また、「ユーティリティ」と呼ばれる、パソコンソフトの小物には、検索を更に高機能化したものもあり、「小物」どころか、素晴らしい働きをしてくれるものがいくつもあります。しかもそれが「フリーソフト」として、誰でも無料で使って下さいと一般に提供されている場合が結構あるのです。

数年前までは自分でバッチとか、マクロとか呼ばれるコマンドを自分で組み合わせた簡単プログラミングみたいなことをしなければならなかったのですが、今はもっと旨い方法があります。たとえば「QGREP」という検索ソフトは雑誌の付録に付いてきたりしますが、ウィンドウズに対応した検索フリー・ソフトです。このソフトの良さは、検索文字列や、ファイル名等々に履歴機能があって、しかも、検索終了後、好みのエディターを立ち上げることができるなど、非常にすぐれた使い勝手になっていることです。また、あいまい検索「正規表現」が使えたり、細かいオプションが指定できるなど、スグレモノです。

このQGREPの最新版が作者の新井健二さんのホーム・ページでダウンロードできます。
QGREP for Windows 95/3.1 ARAKEN Home Page

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