10月のメッセ−ジ   2001年

「21世紀を戦争のない世紀に」 

「 その時、イエスは彼に言われた。「剣をもとに納めなさい。剣を取る者はみな、剣で滅びます。」(ルカ26:52)

1   戦争のやまなかった21世紀 

 21世紀は数多くの悲惨な戦争が繰り広げられ、大量殺戮兵器の開発により、すべての世紀をあわせた死傷者数よりも多くの戦争犠牲者を記録した悲しい百年でした。21世紀を「戦争が当たり前」の時代にしてはなりません。

世界で唯一の、「国際平和と戦争放棄」を理念とする憲法を持つ日本は、「戦争ができるふつうの国になる道」を歩みだしてはなりません。私たちの国は過去50数年間、1つの戦争にも荷担せず、武器を製造輸出することもなく、核兵器を造らず、持たず、持ち込まないと宣言した「誇りある国」です。

9月11日朝、アメリカでイスラム原理主義グル−プと思われる過激派による同時多発テロが起き、1万人近いと予想される死傷者が出る大惨事が起きました。ハイジャックされた2機の民間旅客機が110階もある高層ビルに突入し爆発炎上、さらにビルそのものも完全崩壊。目撃する人々を震撼させました。市民を標的にする卑劣なテロ事件は断じて許されるものではありません。テロリストたちは国際的犯罪者として法の下で断固処罰されるべきです。そのために、世界各国が宗教、民族、政治体制の違いを越えて緊密に協力し、連帯を深めなければなりません。犠牲となられた方々とご遺族に神の慰めをお祈りいたします。

大きな悲しみと打撃を受けた米国は、ブッシュ大統領が即座に「軍事的報復」を選択し、星条旗の下に国民の愛国心を鼓舞し、臨戦態勢に入りました。世界各国にテロ撲滅のために、軍事行動をとる理解と支援を要請しました。一般の市民も、軍事行動に反対する人々は、「テロの味方」だと強く非難されました。

しかし、テロ撲滅に大がかりな軍事報復、「戦争」以外のオプションがないのか、あまりの短急さに驚きを隠せません。アメリカ国民が感情的な悲しみとパニックから癒され回復したとき、その選択を悔いることがないでしょうか。感情的な過剰反応や行動は禍根を残すことになりかねません。

2 国際的な外交による包囲

ロ−マ法王は11日夜、テロを厳しく非難し、アメリカ市民への心からの追悼の意を表明しつつも、「憎しみの感情に耐え、暴力の連鎖を断つ勇気を持つべきだ。」と市民に呼びかけました。私はこのことばを聞いて慰めを得ました。世界各国の政治指導者たちからは「武力報復」「武力行使」の勇ましい声しか聞くことができなかったからです。武力による弾圧は新たな憎悪を引き起こすのみです。感情を自制し、剣を取る代わりに敵さえも愛して祈るという、「和解と共生のための対話」を教えたイエスさの精神を思い起こすときではないでしょうか。

アメリカ市民の3割が、「平和憲法を有する日本は、欧米追随ではなく独自の平和外交を創造的に展開すべきだ」と考えているそうです。しっかりと傾聴すべき声ではないでしょうか。あわてて法改正をして自衛隊を海外派遣することに日本の国際貢献策の論議か集中しています。21世紀を戦争をなくす世紀とするため、平和憲法を持つ日本は、独自の国際的な外交努力に務めることが急務であると思います。そのためには、少なくともアジア諸国に、多くの友人をつくることが大切です。中国や韓国さらに多くのアジアの国々と信頼関係の醸成に務め、真実な隣人関係を築くことが求められていると思います。

武力行使ですべてを解決する20世紀のあり方から、脱却する時が来ています。

2001年10月4日