2014年度 主日礼拝
  2014年6月29日




「人知をはるかに超えた神様の守り」

                                     使徒23:11-24

ついにパウロはエルサレムで逮捕され、ローマ兵営内の牢獄に入れられました。ユダヤ教会側では、40人以上の暗殺グル−プが組織され、パウロを殺害する秘密計画が練り上げられ、まさに実行寸前という緊迫した状況になっていました。パウロの人生の最大危機といってもよいでしょう。

その時、パウロの甥が不穏な動きがあることを獄中のパウロに知らせました。するとパウロはすぐさまロ−マ部隊を率いる100人隊長を呼び、「1000人隊長のもとにこの青年を連れて行くように」願いました。駐屯地の総司令官である1000人隊長は秘密が漏れないように配慮して青年から暗殺計画について詳しく聞きだしました。

1000人隊長はすぐさま行動をとりました。2人の100人隊長に、「今夜9時に、警護の兵470名を率いてパウロをカイザリアに送り出すこと」、「総督ぺリクスに確実に届けるよう騎兵隊を帯同させること」を命じ、自らは総督ペリクスにあてて、経過報告を記した直筆の手紙を書いて託しました。こうした迅速な行動の結果、パウロはロマ兵に護衛され、無事カイザリアに到着し、ヘロデ王の官邸において保護されることとなりました。こうして40名の刺客グル−プからパウロの命が守られたのでした。

1.    神の守りの確かさ

私たちが今朝、この箇所から学ぶことができるテ−マは「神の守りの確かさ」です。
パウロを殺害しようとたくらむユダヤ教指導者が送り込もうとした刺客は40人でした。一方、パウロを守るために神様が用意されたのは470名のロ−マ軍の精鋭部隊でした。歩兵200名、槍隊200名、さらに騎馬隊70名の陣容でした。暗殺団がもはや手を出すことができない陣立てでした。こうしてロ−マの軍団に守られてパウロはエルサレムを脱出することができました。神様の守りというものはこれほど大きいのです。そして、神様の守りが確実なのは背後に、「勇気を出しなさい。あなたはロ−マでも証しをしなければならない」(使徒2311)とのイエス様の約束のことばがあったからです。神のことばと神のお約束があるところには、神の守りがあり、その神の守りは人知をはるかに超えるのです。

「主の使は主を恐れる者のまわりに陣をしいて彼らを助けられる。主の恵みふかきことを味わい知れ、主に寄り頼む人はさいわいである。」(詩篇347-8
この詩篇のことばの背景に
U列王6章以下のできごとがあります。ドタンの町に住んでいた預言者エリシャの居場所を突き止めたアラム王は、エリシャを殺害するために夜中に軍隊を送って周囲を包囲してしまいました。翌朝、一夜にして敵軍に完全包囲されてしまったことを知ったエリシャの侍従は腰をぬかさんばかりに驚き、エリシャに報告しました。すると「 エリシャは祈って【主】に願った。「どうぞ、彼の目を開いて、見えるようにしてください。」【主】がその若い者の目を開かれたので、彼が見ると、なんと、火の馬と戦車がエリシャを取り巻いて山に満ちていた」(U列王6:17)のでした。こうした絵を生き生きと思い浮かべるとき、私たちは神の守りの偉大さを実感させられます。信仰者の見る神の守りのスケ−ルの大きさに驚かされます。

目に見えるところいかに厳しく、困難に満ち、希望をそぎ取ってしまうような絶望的な状況であっても、なお、見えない世界においては神の守りは確かで偉大なのです。幾万の天の軍勢が陣をしいて取り囲み、守ってくださるほどなのです。

恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。わたしがあなたの神だから。わたしはあなたを強め、あなたを助け、わたしの義の右の手で、あなたを守る。」あなたの神、【主】であるわたしが、あなたの右の手を堅く握り、「恐れるな。わたしがあなたを助ける」と言っているのだから。」(イザヤ41:10、 13)

祭司長たちが40人の刺客を用意すれば、神様は470人の精鋭ロ−マ兵を備えることができ、さらには無数の天の軍勢さえ配置することができるのです。ひとりの信徒さんが病院で医者から癌の診断とともに、「お正月を無事に迎えられたらいいですね」と余命宣告を受けました。私は「全能者なる神様は医者が3か月と言ったいのちを、30年にすることも可能なお方です」とお伝えし、希望をもって祈りましょうと語り、さらに教会でも継続的な祈り会を始めました。今なお彼はお元気です。

2.    奇跡ではないが大きな神のみわざ

パウロの救出に際し、2人の人物が神様に用いられました。一人はパウロの甥の青年、もうひとりはロ−マの1000人隊長クラウデオ・ルシア(
使徒23:26)でした。
パウロは危機的な状況の中におかれましたが、今回に限っては特別な奇跡や天使による救出劇もありませんでした。かわりにごくごく普通の人物が用いられました。

一人は甥パウロの甥です。青年とあるのはせいぜい167歳までだそうです。おじさんであるパウロの身を案じて知らせに来たことは間違いありません。しかし用意周到な暗殺計画を誰かが密告して頓挫したとなれば徹底的に犯人探しが行われ、ついには自分の命までも狙われる危険があります。そんな危険をおかしてまで甥はパウロに暗殺計画の動きを知らせました。一人の若者の勇気ある行動でした。小さな勇気が事態を変えることはしばしばあります。神が私たちに与えてくださった霊は「臆する霊ではなく力と愛と慎みの霊です」(2テモテ17)。このような勇気ある行動は、聖霊による力の一つでもあるのです。

かつて、イエス様のお話を大人に交じって聴いていた一人の子供がイエス様の弟子のアンデレにお昼のお弁当である「大麦のパン5つと2匹の魚」(ヨハネ6:9)を差し出しました。大人に貧しい粗末な弁当を差し出すこと、それはこの子供にとっては勇気のいる行動であったと思います。子どもが最初に示した小さな勇気と行動が、やがて5000人もの人々へのパンの給食というキリストの奇跡を引き起こしたのでした。小さな勇気は世界を変えます。私たちも小さな勇気を日常の生活の場の中で持たせていただきましょう。

次に神様は異邦人である1000人隊長ルシアを用いられました。彼は、100人隊長が連れて来た若者を無視せず、秘密が漏れないように二人だけになって青年の話を懇ろに聴きました。彼は話を聴き終わると、すぐさま護衛兵を組織し、パウロをカイザリアまで無事に送り届けるように命令を下しました。しかも総督ペリクスあてに直筆の手紙まで書き添えました。彼の迅速な行動力がパウロを守ったと言っても過言ではありません。

エルサレムの神殿で騒動が起き、町中が大混乱に陥ったとき、1000人隊長が暴動を鎮めるために急いで駆け付け、事態を適切に収拾しました。ですからパウロは1000人隊長の言動を見て、この人物は信頼できると判断したのではないでしょうか。パウロは今回、徹夜の祈りをしたり、神に特別な奇跡を起こしてくださるように願ってはいません。その代り、1000人隊長ルシアの冷静な判断力と行動力に信頼して、任せたのでした。信仰にはこのようなバランス感覚も必要といえます。それは神への信頼と人への信頼のバランスす。

最後に、今回、私たちは改めて、この1000人隊長の仕事ぶりから学びたいと思います。ロ―マの市民権をもつ人物を守ろうという責任感、青年の話にも注意深く耳を傾ける謙虚な姿勢、決断力と判断力さらには迅速な行動力、上司にあたる総督に手紙まで書き送った忠実さ、どれをとっても一流の人物と言えます。パウロが身を委ねても良いと判断しただけのことはあります。なかでも彼の行動力には感心します。速やかな行動はより大きな信頼感を生み出します。

今しなければならないことを私たちはどれぐらい多く引き伸ばしてしまっていることでしょうか。どんどん後回しにしてしまっていることはないでしょうか。掃除機の中のほこりのように後ろに溜め込めばため込むほど掃除するときに大変な状況を迎えてしまいます。

すぐに書かなければならない手紙はないでしょうか。返事しなければならないメ−ルが放置されていないでしょうか。ひとこと入れておかなければならない電話を先延ばしにしていないでしょうか。ずっと引き伸ばしている案件をいくつ抱えていることでしょうか。いつになったら具体的に手を付けようと考えているのでしょうか。

異邦人の1000人隊長ルシアから学ぶことが多くあると思います。クリスチャン仲間から学ぶことも多くありますが、同じぐらいこの世の人々から学ぶことも多くあるのです。謙虚な心を失わず学び続けるこころを持ちたいものです。

そして、神の約束のことばを信じる者に対する神様の守りの絶大さを今朝、改めてこころに覚えましょう。

 「人は心に自分の道を考え計る、しかし、その歩みを導く者は主である。」(箴言16:9)



   

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