4月28日(日)「働くこと」説教要旨

           聖句
旧約
 「神はまた言われた、『われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう』。神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。」  (創世記1:26-27)

新約
 「もらったとき、家の主人にむかって不平をもらして言った、『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。自分の賃金をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ』。」  (マタイ20:11-14)

  最初アダムとエバが造られた時は、エデンの園の木の実を食べて生活していて、働く必要はありませんでした。しかし、アダムが罪を犯した時、神はアダムに言われます、「あなたは顔に汗してパンを食べなさい」(創世記3:19)と。しかし、「労働」には、神の創造の業に参加して新しいものを作り出す「よい面」と、労働し汗を流す「悪い面」とがあります。けれども具体的に見ると、労働にはいろいろな意味があります。1 まず「製作し」、ものを作り出すこと。2 労働はからだのためになります。労働をしないと、からだはなまってしまいます。しかし、昔聞いたことがあります。「はたらく」とは、「はたを楽にする」ことだと、労働はただ自分の生活のためだけではなく、他者のためになります。何か製作したら、その製品は多くの人に役に立ちます。たとえば電車の車掌は、輸送をすることによって、多くの人を、いち早く目的地に着くようにします。このように労働は、他者のためにあることを忘れてはなりません。

  労働の中に、この「他者のため」という要素が入って来るとき、私たちは全く違った次元、神の次元に立つのです。創世記では、神は人を造り「生めよ、増えよ、地に満てよ」と、神の創造の業に似せて、人間自身も新しいものを創造しなさいという命令を与えました。神が最初人を男と女に造られたのは、「愛の交わり」を造ったのです。もし私たちの労働が、「はたを楽にする」意味があるとすれば、他者のための労働です。「他者のため」とは「愛の交わり」と同じです。

  「神は愛である」というように、神の本質は愛であります。愛を実現することが、神に従う行為であります。とすれば労働において、他者のために「はたを楽にする」ことは、「労働を通して愛を実現する」ことになります。

  そこでこれまでのことをまとめてみましょう。1 「働く、労働する」ことは、まず何かを創り出すことです、製作です。2 次に「働く」ことは、自分の生計を維持するため、自分の地上の生命を保持するためであります。3 そして働くとは、「はたを楽にする」、他者のための労働ということが加わります。愛と同じ原理です。最後に、4 したがって労働は、神の創造の業に参加することです。神と同じでなくても、それに類比して、地上において何かを創造することです。

  しかし、このように考えてくると、日常の仕事をすることも、神の創造につらなることになりませんか、それは大変大きなことです。私たちは日常生活で、そんなに大きなことを考えて仕事をしていないでしょう。けれども信仰は、そのことをさせます。そのことをしなくては、信仰もただ観念の中だけで、具体性がないことになります。

  さて今日のマタイ福音書のたとえでは、神は労働者に一様に一デナリの報酬をはらいます。朝早く行った人にも、夕方遅く行って、1時間ぐらいしか働かなかった人にも、同じ賃金です。これは不公平ではないかという批判がでてくるでしょう。確かにこの地上の労働契約からすれば、それは不公平でしょう。しかし、もし夕方1時間しか働かない人を、何か障害のある人と考えたらどうでしょう。神はどんな障害の人にも、男にも女にも同じ賃金を払います。神の賃金の支払い方法は、この世とは違います。全く平等です。私たちは今日最も新しい社会制度として、男女のまた、労働の機会均等を唱えます。戦前の労働関係にはなかったことです。その最も新しい最新の労働事情が、すでに二千年も前にイエスの例え話に出てくるとは、聖書とは、驚くほど新しい書物ではないでしょうか。この新しい考え方は、それは先の労働についての見解、3 他者のための労働、4 神の創造への参加について考える時、納得がゆきます。神との関係、そのことが私たちに人間に対する見方を変えます。それを根本的に変えます。
   


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