11月11日(日)「山の向こう」説教要旨

           聖句
旧約
 「わたしは山にむかって目をあげる。わが助けは、どこから来るであろうか。わが助けは、天と地を造られた主から来る。主はあなたの足の動かされるのをゆるされない。あなたを守る者はまどろむことがない。見よ、イスラエルを守る者は、まどろむこともなく、眠ることもない。主はあなたを守る者、主はあなたの右の手をおおう陰である。昼は太陽があなたを撃つことなく、夜は月があなたを撃つことはない。」(詩編121:1-6)

新約
 「この御使は女たちにむかって言った、『恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしにわかっているが、もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。」  (マタイ28:5-6)

「山のあなたの空遠く幸い住むと人の言う。
 ああ、われ人ととめ行きて、涙さしぐみ帰りきぬ。
 山のあなたになお遠く、幸い住むと人の言う」
  この詩は「涙して帰って来る」と、何かしら悲しい調べが聞こえます。信仰から見れば、この詩は「こちら側」だけで、「神さまの側」がないように思えます。年を取ると、人生の淋しさを感じることが多くあります。ではこの詩のように「われ人ととめ行きて、涙さしぐみ帰りきぬ」となるのでしょうか。それはではありません。その時、天来のごとく響いてくるのは、今日の詩編の御言葉です。それはこちら側しかないこの詩とは正反対です。

  「わたしは山に向かって目をあげる。わが助けは、どこから来るであろうか。わが助けは、天と地を造られた主から来る」。ここにはこの全世界の誰も与えることのできない力強い響きがあります。それは「向こう側から来る神の現実」です。年とって学ぶことは、私の努力ではない、「向こう側から来るもの」を知ることです。人生には「涙さしぐみ帰りきぬ」という悲しい事実もあるでしょう。しかし、そこでマタイ福音書のキリスト復活の個所を見てください。イエスが十字架に死なれたとき、女たちは、イエスの墓に行きました。しかし墓は空でした。ただそこに御使がいました。
「この御使は女たちにむかって言った、『恐れることはない、あなたがたが十字架におかかりになったイエスを探していることは、わたしにわかっているが、もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。』」。
ここにあるのは決して「涙さしぐみ帰りきぬ」ではありません。女たちは仕方なしに、涙を流しながら帰ったのではありません。空の墓を越えてよみがえったキリストがいらっしゃるのです。それは私たちのこしらえるものではありません。向こう側から来るものです。「主はあなたの足の動かされるのをゆるされない。あなたを守る者はまどろむことがない。見よ、イスラエルを守る者、主はあなたの右の手をおおう陰である」とあるように。

  十字架の死にあった弟子たちは、恐怖と疑惑、混乱と無秩序の中にありました。詣でたその墓は空。しかしその空っぽは、キリストが復活して勝利した証拠だったのです。信仰とは、この死の墓の空を乗り越えて進むものです。それは私たちの勇猛果敢さではありません。あなたはこちら側ばかり見ています、向こう側を忘れています。

  「わたしは山に向かって目をあげる」。それは登ってゆこうと見上げるのではありません。美しいと思って見はるのでもありません。「わが助けは、どこから来るであろうか」。山を見上げて祈り始めるのです。「わが助けは、どこから来るのであろうか」。どこからとも分かりません。しかし、その山のもう一つ向こうに、この山を造られた生ける主がいます。このことを忘れてはいけません。山だけ見るなら、驚いてたじろぐでしょう。しかし、信仰とは、山を乗り越えてゆくことではありません。目の前の山のもう一つ向こうを見ることです。それはこの山を創造したお方です。あなたも私たちも造られたお方です。信仰とは、一歩退いて、この現実のもう一つ向こうを見る生き方です。パウロは病気した時、このサタンの使いのもう一つ向こうを見ました。すると信仰がわいてきました。そこで「わたしの恵みはあなたに十分である。わたしの恵みは弱いところに完全に現れる」と言う神の御声を聞きました。それは「わたしは弱い時にこそ強い」という神の恵みの真理であります。

  皆さん、現実の厳しさにめげてはなりません。弱音を吐いてもいいですから、その現実のもう一つ向こうを見ましょう。現実に負けてはなりません。山を見て、「わが助けはどこから来るのであろうか」と、そのもう一つ向こうを見ましょう。その時、道は必ず開かれます。
   


Copyright(c)2010 Setagaya Chitose-Church All rights Reserved.