日本キリスト教団

   
2023.11.19
説教ダイジェスト
礼拝説教要約
「愛し愛されて」
エフェソの信徒への手紙
4章32節-5章2節
 イエスは、幼い子どもたちを祝福してくださいました。イエスの弟子たちは イエスの邪魔になってはならないとイエスのもとに来る幼子たちを追い払おう としますが、イエスは弟子たちを叱り、幼子を喜んで迎えてくださいました。 イエスにとって、大人も子どもも大切な存在です。

  イエスが幼子を祝福されたということは、マタイ、マルコ、ルカ、3つの福 音書すべてに書きとどめられています。そして、これに続いて3つの福音書が 必ず記しているのが、富める青年の話です。

  人生に悩むある青年が、イエスに「何をすれば永遠の命を得られますか」と 問うと、イエスは答えます。「なぜ、善いことについて、わたしに尋ねるのか。 善い方はおひとりである。もし命を得たいのなら、掟を守りなさい。」この青 年は、自分が何をしたらよいのだろうかと思っていますが、イエスは「善い方」 が問題なのだと言われるのです。神様をあなたはどういう方と見るかが、肝心 だと言われるのです。

 ユダヤの人々は神様から授かった戒め、十戒を守るようにと言われていまし たが、別の箇所でイエスは、十戒の心は「神を愛し隣人を愛する」ことだとさ れました。私達は、神が独り子を犠牲にするほど神様に愛されています。その 神の愛を喜び感謝しつつ隣人を愛します。そのようにして、私たちに永遠の命、 神の救いに与る豊かな人生があるのです。 振り返って、私たちは心をどこに置いて生きていくのでしょうか。私たちの 人生の初めは、どこでしょうか。何でしょうか。これを何とするかで、私たち の人生の歩み方、心の持ち方は変わるのだろうと思います。聖書は、どの人も 神様が命を授け、お造りになった尊い存在だと言っています。

  ある宗教団体のパンフレットに、子どもたちに向けてこういうのです。あな たたちは、こんな親のもとに生まれたくなかったとかいうかもしれない。けれ ど、本当は、あなたがたがまだお母さんのおなかの中に入る前に、このお母さ んの子どもにしてくださいと神様に頼んだから生まれてきた、このお母さんの 子どもであることはあなたが願ったことだというのです。

  もっとこの話を進めていくと、一人ひとりの責任を問い詰めることになるだ ろうと思います。最初からすべてあなたの願ったこと、貴方が責任を取ること ですよと教えているのです。すべて自分が決めたこと、宿命論ではないでしょ うか。人に希望を与えるはずの宗教まで自己責任というのかと、私は背筋がぞ っとしました。

  こんな調査があります。5年前、若い人たち、10代から30代までの日本 人の80%が将来に不安があると答えたそうです。日本の若者には、将来は決 して希望に輝いてはいないのです。イエスに質問したあの青年のように、永遠 の命を得るにはどうすればいいのでしょうかと思っているのです。

  私の息子が20歳を過ぎ、就職活動をしていた頃、2012年の直木賞の小 説は、就活の話です。朝井リョウ『何者』。5人の大学生が就職活動をしてい る話です。就職活動をする中に、自分とは何者なのかと問われるのです。5人 が5人それぞれの将来へのさまざまな目論見を抱きつつ、なかなか内定を取る ことができないことを悩み、誰が一番早く内定を取ることができるか、お互い を探る思い。そして、誰かが内定を取ったと聞くと、その会社はブラック企業 だと噂をするのです。

  思い出せば、息子が内定をもらったと聞いて、親の私も「その会社は、ブラ ック企業ではないよね。」という思いが頭をかすめました。働きづめで過労死 するかもしれない。苦労しても、報われるかどうかわからない。ブラックだと 思うなら、すぐにやめなさい。私は心の中で、息子に向かってそのように思っ ていました。これから就職するのに、いったい何を思っていたことでしょう。

  「あなたがたは神に愛されている子供ですから、神に倣う者となりなさい。」 この聖書の言葉を大切にしていきたいし、これから社会に巣立つ子どもたちに 勧めたいことです。

  人生いろいろな難問があるものです。いろいろな試みにあうものです。皆さ んもそうだと思いますが、人生の難問、試みに会う時、一人ひとり心の中に神 様がいてほしい、神様の愛を信じてほしいと思います。一人が生きることは大 変なことだと思います。愛されているのだと自信を持ってほしいです。

  そして、もっと欲張って思うのは、一緒に生きている人、同じ時代に生きて いる人たちに、辛い目をしている人たちに、同じ神様から命をもらった者同士、 お互いにやさしい心を持ってほしいです。人は一人では生きられません。多く の人々の中にいることの良いこと、恵み豊かさを思います。神様に愛されていることを心の支えにして、強く優しく生きてほしいと思います。

 愛隣こども園
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