日本キリスト教団

2022.10.30
説教ダイジェスト
礼拝説教要約
「道を拓く」
創世記9章9-11
   子どもの頃、私は将棋を見よう見まねでやったものです。祖父が相手をして くれましたが、祖父にとってみれば、子どもの私など相手になりません。手心 を加えたり、わざと負けてくれたりだったと思います。強さ、能力の差が格段 に大きい相手、とてもとても弱い相手を前にしたとしたら、私たちはどんなこ とをするでしょうか。祖父は孫の私を相手に、、孫の心を傷つけないようにと 配慮していたのだろうと思います。手心を加え、わざと負けたりしたのです。

  神様と私たち人間の関わりはどうでしょうか。神様は全知全能、この世界の 中で神様以上に優れたものはない。方や、人間は、神様によって造られた被造 物、弱くて、脆くて、いつか朽ちてしまいます。そんな人間のことを、神様は いとおしんでくださっています。神様はご自分の力をありったけはっきしたら、 この世界も、人間も、いっぺんに吹き飛んでしまうでしょう。しかし、そうは なさらないのです。では、どのようにしておられるでしょうか。

  神様はこの世界を創造され、地上には罪多い人間が増え広がりました。もう これ以上、この地上に罪人が増え広がらないようにと、洪水を起こしました。 ノアとその家族だけが箱舟に入り救われました。洪水が引いて、再び地上で 人々が暮らし始めるようになります。その時、今日の聖書の言葉では、神様が 新しい世界に対して契約を結ぶと言われています。もう金輪際、この地上の 人々が罪深いからと言って滅ぼすことはしないと誓われています。

  「 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なる ものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決 してない。」この言葉を、神様はどんな気持ちで言っておられるのでしょうか。 神様の身になれば、人間は罪人であり続け、これからもこの地を滅ぼすべき だと思うような時が来るのですが、神様が自制、自重するというのです。将棋 であれば、手加減を加える。どうしてか、神様はこの世界を慈しんでおられる からです。自分自身を抑えること、これが神様の慈しみ、愛の表現なのです。

  今から100年前に、フランスの哲学者で、シモーヌ・ベーユという人がい ました。神様がこの世の罪深さを知りながら、即座に滅ぼされないことを神の 2 愛の表れだと言い、「神の撤退」と言いました。神様が本気を出すとこの世の ものは皆、吹き飛ばされてしまうので、神様はご自身の持っている力をすべて 使わないように抑えておられる。だから、人間たちは、罪深くてもこの世に生 きていられるというのです。神様がご自分の力を抑えてくださっている、撤退 してくださっている、だから、この世界は今日も明日もこれからも続いていく のです。自分を抑えること、これが神の愛だと言うのです。

  神の独り子イエス様、この方もご自分の力を抑えてくださいました。神の力 を自分が生き延びるためには使われない。病気の人を癒したり、世の人が平和 になることの為だけに使われました。イエス様は、神の力で人を押しのけるこ とはなさいませんでした。さらには、神の力を使わないままで十字架にかけら れたのです。十字架という出来事に、神様とイエス様の私たちへの愛が現わさ れています。自分の力を抑えること、これが愛でした。神様にとってみれば、 どれくらい大きなへりくだりだったか、どれくらい我慢をなさっているか、そ ういうことを思うと、まさに「撤退」という言葉がふさわしいと思います。

  ロシアがウクライナに攻め込んで8ヶ月が経ちますが、プーチンの軍隊は出 来るだけ早くすべて撤退すべきだと思います。そのようにして、この世界に対 する愛と平和が現わされるべきです。私たち人間には、誰にもプライドがあり、 意地がありますから、撤退というのはプーチンにしても生易しいことではない とは思いますが。

 神様は、この世界に道を拓いてくださいます。これからもこの世界で生きて いきなさいと言われます。神様はあなたたちを慈しみ、あなたたちがこの世界 で生きて行けるように導き守るのと言っておられます。9 節「わたしは、あな たたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。」神様はいつまでも永遠に この世への慈しみを表わしてくださると言われています。神様の撤退によって、 神の御子イエス様がこの世に与えられました。神様はこの世界を決して見捨て ることなく、ご自分の思いを抑えるほどの大きな深い慈しみで包んでください。



   
 愛隣こども園
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