日本キリスト教団

20200419 説教ダイジェスト
礼拝説教要約 「トマスも一緒に」
ヨハネによる福音書20章24-29節

先週はイースター、イエスはよみがえり、弟子たちの交わりの中に現れました。弟子たちはイエスが復活したことを信じたのですが、トマスだけがいなかった。トマスはイエスのよみがえりを疑うようになってしまいました。 

その日、イエスは十字架にかけられて傷ついたご自分の手をトマスに差し出されました。イエスの手に傷の跡を見て、トマスはすぐに信じました。証拠を見てすぐに信じた、この素直さが彼を救ったのです。 

イエスはご自分の手を差し出されて、「見なさい」と言いわれます。この「見なさい」は、新約聖書のギリシャ語で、特に「よく見る」「意識してみる」「注意深く見る」という意味の言葉です。漫然とあたりを見ているのではない、これは何かと注意深く見つめるという意味なのです。 

この「よく見る」(エイドン)という言葉は、このヨハネ福音書の一番初め、1章で繰り返し使われています。洗礼者ヨハネは、イエスを世の人に救い主だと紹介し、人々にイエスを「よく見よ」と言います。1章29節、イエスを指さして、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ」。36節、「見よ、神の小羊だ」と促したので、弟子はイエスに従った。そして、46節、ナタナエルが「ナザレから何か良いものが出るだろうか」というので、フィリポがイエスに引き合わせようとして言います。「来て、見なさい」。ナタナエルはイエスに出会い、イエスの弟子になりました。イエスを「よく見た人」は、イエスが救い主だと気が付き、従いました。 

この後、ヨハネ福音書は、イエスが救い主だと明らかにしていきます。「わたしは良い羊飼い」「世の光」「命のパン」「わたしはよみがえりであり、命であり、真理である」などなど。そして、今日の20章に至ります。「わたしの主よ、わたしの神よ」とトマスは叫びました。このトマスの告白する言葉に、イエスこそ良き羊飼い、世の光、ヨハネ福音書がここまでに明らかにしてきたことすべてを信じるようになったことが暗示されています。よみがえりを信じると、イエスこそ良き羊飼い、世の光という信仰へ導かれます。 

疑うトマスでしたが、イエスの手の傷を見て、疑いから一転、大回心です。インドに伝道に行ったという伝承がありますが、どれほど衝撃的な回心だったことか、インドに行く、これも本当のことかもしれないとも思えてきます。 

もし私がイエスの手の傷を見たなら、それで信じただろうか。いやいや、イエスを見ることのできなくなった、今の時代の私たちにとって「見る」とはどういうことだろうか。2000年前のことですから、もうイエスの手は見ることができません。 

最後の29節「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は、幸いである。」これは、この福音書を読む人たちに向かって言われています。この福音書が書かれたのは、イエスがよみがえって60年後。その時代の人々がこの福音書の読者です。イエスから二世代三世代後の、イエスを見ないままで信じている人たちです。ですから、「見ないのに信じる人は幸いである」とは、イエスは読者全てに、あなたに向けて、私たちに向けて言われている言葉です。「あなたは幸いだ、あなたは私を見ることができないのに、よくぞ私を信じてくれている、あなたは信仰者としてよくやっている」と喜んでくださっているんです。Ⅰペトロの手紙1:8「あなたがたは、キリストを見たことがないのに愛し、今見なくても信じており、言葉では言い尽くせないすばらしい喜びに満ちあふれています。」 

トマスのようにイエスを見ることができなくなった私たちは、イエスを見たトマスと同じように見るのではない。言ってみれば、肉の目ではなく、「心の目で見る」のです。聖書の言葉、イエスの言葉を耳で聞いて心で聞くのです。心の目でイエスをよーく見るのです。イエスのことを自分にとって、隣人にとって、この世界にとってどういう方なのか、そして、過ちを繰り返し不出来で罪人の私にとってどういう方なのか、病に苦しむあの人にとってどういう方なのか、そういうことを照らし合わせて、イエスをよーく見るのです。私たちは、そうやって信じていくのです。肉の目で見ないで、心の目で見る。見ないで信じるのです。 

その日、弟子たちの群れの中にトマスが一緒にいなかった。それは、とても残念なことでした。イエスを疑うというやっかいなことにもなりました。しかし、それを通して、私たちにとって「信じる」とは、お会いすることができないイエスを「心の目で見る」ことだということが明らかにされました。 

26節、弟子たちの群れの中に、よみがえったイエスが来て真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われ、傷ついた手を見せてくださいました。イエスの傷ついたみ手は、私たちの心の目に、どのようにみえるでしょうか。救いのみ手であれば良いなと思います。これからも、イエスが私たちの真ん中に立っていてくださるように祈ります。 

 
   
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