日本基督教団小月教会

よくわかる聖霊論

よくわかる聖霊論 ■平野耕一著
■いのちのことば社
■四六版・272ページ

どうも、一部の教派においては「聖霊=異言」のようになってしまっている感があります。パウロは決して異言を否定してはいませんが(Iコリント14:29「そして、異言を語る事を禁じてはなりません」)、かと言って異言を積極的に推奨していない事も、聖書には明らかです(同12:30「皆が異言を語るだろうか」、同14:19「教会では異言で一万の言葉を語るより、理性によって五つの言葉を語る方をとります」、同14:27「異言を語る者がいれば、二人かせいぜい三人が順番に語り、一人に解釈させなさい」)。

これを見ても、会衆が一斉に異言を語るような礼拝を、ましてや「異言を語らぬ者はキリスト者にあらず」のような風潮を、パウロがよしとしていない事は明白でしょう。

さてこの本は、恐らく聖霊派の牧師によって書かれたものではないかと思います。文章がなんとなく聖霊派っぽいのです(どこが、と言われても困りますが)。ときくと、改革派やルーテル派などの伝統的教派の信徒は眉をひそめるかも知れません。が、この本は意外にも(と言っては失礼ですが)なかなかの良著です。

聖霊論というと、神学的な難解な書物という印象がありますが、この本は大変分かりやすく、また逐一聖句を引用して解説してあるので、「ただひたすら聖霊体験を並べただけ」の、どうかすると新興宗教のパンフレットと見紛うような(「あきらめていたガンが治った!」とか(笑))内容にはなっていません。

また、異言についても書いてはいますが、聖霊の賜物はそれだけではなく、信仰生活のあらゆる点に及ぶという論旨は、聖書にものっとったものですし、私のような改革派の信徒が読んでも、なるほどと同意できるものです。

ただ、分かりやすい反面、神学的に鋭く突っ込んだところはほとんどないので、そういう書物を求めて読むと、少し物足りなく感じるかも知れません(東方教会と西方教会の聖霊理解の違いくらいは、書いても良かったのでは)。「聖霊とはいかなる存在か」よりも「信仰生活における聖霊の業とはいかなるものか」が主眼(というか、ほとんど)なのです。

ですが、信徒全員が神学を知らねばならない訳でもないですし、聖霊を「なんだか分からないもの」として片付けるよりは、こういう分かりやすい、しかも聖書にのっとった理解を助ける書物も、大いに有益ではないでしょうか。また、聖霊に関する聖句というと、使徒言行録ばかりが引用される傾向もありますが、この本では旧約からもかなりの聖句が引用されています。これは新鮮な発見でした。

付け加えますと、この本、装丁が非常に洒落てます。著者は前書きで「著者が福音派なのか聖霊派なのかは、表紙や目次を見るだけで明らか」と書いていますが、恐らくこの洒落た装丁は、そこら辺りも意識しての事でしょう。文章も平易で字も大きいですから、ページ数の割りにすっと読める本です。聖霊派、福音派、エキュメニカル派と教派を問わず、一読をお薦めしたいと思います。



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