日本基督教団小月教会

この最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。

そこで、王は答える。「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(マタイ福音書25:40)

あるところに、人を人とも思わない、悪徳業者の社長がいました。彼は、金のためならどんな悪どい事もする男だったのですが、不景気の波には勝てず、クリスマスを前に会社が倒産して、一文無しになってしまいました。

住む所もなくした彼は、いつも着ていた背広を着て、とぼとぼと雪の降りしきる町を歩いておりましたが、困り果ててふと教会の存在を思い出しました。「そうだ、教会へ行って、今晩泊めてもらおう」と思った訳です。そして教会への道筋を急いだところ、道ばたに見るもみすぼらしいおじいさんが、物乞いをしていました。こんなじいさんには関わっていられないと、彼は足早に立ち去ろうとしましたが、何せ今から教会に行こうとしているのですし、自分も乞食同然になったのですから、金の亡者であった彼も珍しく、このまま見過ごしにするのは可哀想だと思いました。

そして彼はそのおじいさんに、自分の着ていた背広を差し出して、「俺も一文無しになったから金はないが、その格好じゃ寒いだろう。これがあればちょっとは寒さをしのげるから、とっておきな」と言いました。そのおじいさんは、黙ってそれを受け取り、にっこりと微笑んで彼の前を立ち去りました。

吹雪の中、上着を失った彼が、震えながらようやく教会にたどりつくと、牧師が暖かく迎えてくれて、「先ほど、あなたの背広を着たおじいさんが来て、あなたが間もなくここに来ると教えてくれたので、お待ちしていました。おじいさんは礼拝堂に入りましたよ」と言いました。男は、はてあのおじいさんには教会に行くなどとは言っていないはずだがと思って、礼拝堂に入りました。しかし、礼拝堂におじいさんの姿は見当たりません。

おやと思って、彼が更に一歩進み出ると、何と礼拝堂の十字架に、さきほどおじいさんにあげた背広がかかっていました。男は、その時、マタイ福音書の今日の聖句を思い出したのです。「この最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」。彼はひざまずいて「ああ、イエス様、あなただったのですね」と、泣いて悔い改めました。

イエス様は今も私たちの、そして私たちの隣人の中におられます。そしてそのイエス様は、こう私たちに語りかけられました。

「行って、あなたも同じようにしなさい」。



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