日本基督教団小月教会

私は、その罪人の中で最たるものです。

「キリスト・イエスは罪人を救うために世に来られた」という言葉は真実であり、そのまま受け入れるに値します。私は、その罪人の中で最たるものです。(テモテへの手紙一1:15)

我々が歌う讃美歌の中で、クリスマスキャロルを除いて一番一般にも有名なのは、おそらく「アメイジンググレイス」(讃美歌21・451番「くすしきみ恵み」)ではないでしょうか。アメイジンググレイスというのは「驚くほどの恵み」という意味です。グレイスというのは、別に貧しい人にお金をあげるというような恵みではありません。「神様の恵み」です。

この讃美歌の歌詞を書いたのは、ジョン・ニュートンというイギリス人です。ジョンは、グレイハウンド号という奴隷船の船員でした。奴隷の扱いは酷いもので、またその船の船員の生活も、大変堕落したものだったようです。ジョンは幼い頃母親から聖書を読み聞かせられたんですが、いつしか聖書の事も神様の事も忘れてしまっていました。

そんなある日、順調に航海を続けていたグレイハウンド号は、突然激しい嵐に巻き込まれました。船室には海水が流れ込み、船は右へ左へ激しく揺れます。もはや沈没は時間の問題かと思われました。その時ジョンは幼い頃読みきかせられた聖書の言葉を思い出し、生まれて初めて真剣に神に祈ったのです。「神様、私はあなたの前に罪人です。どうか罪深い私を助けてください。そうしたら、私の人生をあなたにお献げします」。

すると、何と奇跡的にグレイハウンド号は嵐を抜け、更に、風に流されて食料も底をつこうとした時、突如として風向きが変わり、グレイハウンド号を陸地へと導いたのでした。グレイハウンド号が岸についた時、船のキッチンではまさに最後の食料を料理しているところだったそうです。おまけに、彼らが陸に上がるやいなや、再び激しい風が吹き荒れ始ました。

この事実を目の当たりにしたジョンは、きっぱりと「私の祈りを聞き届けてくださる神は、確かに存在する。私は神の大いなる恵みに触れて、生まれ変わったのだ」と確信しました。その後のジョンは、しばらく奴隷船の船長を続けましたが、彼の船における奴隷の扱いは飛躍的に向上し、船内で朝夕の礼拝をもつ時間も設けました。数年後、彼は奴隷船からきっぱりと足を洗い、牧師への道へと進みます。彼が説教壇に立つ時は、いつも礼拝堂は満員だったそうです。

ジョン・ニュートンはその後、82歳まで生きて天に召されました。彼の説教者としての影響は非常に大きく、後にイギリスにおける奴隷廃止運動の指導者となるウィリアム・ウィルバーフォースも、ジョンの教会に頻繁に出入りし、ジョンの説教に大きな影響を受けました。奴隷船の船員を助けて牧師に導き、そんな彼の説教を聴いていた人物が奴隷廃止運動のために立ち上がる。こんな遠大な計画が、人間に立てられるでしょうか。これこそ正にアメイジンググレイスの一言に尽きます。

そんな彼の最後の言葉をご紹介します。

「私は年老いたが、薄れかける私の記憶の中でも、ただ2つだけ確かに覚えていることがある。1つは、私が罪人のかしらであるということ。もう1つは、キリストが偉大なる救い主であるということだ」

我々も、何を忘れてもこの2つの事だけは、常に忘れないようにありたいものです。



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