「フルート体験レッスン」   千田祥子
 
時間の余裕が出来たので何か趣味をと思い、あれこれ考えた末に、2年ほど前からフルートを始めました。何歳になっても楽しめると聞いていたので練習を続けています。
 
先日、小さなコンサートの案内に「フルートの体験レッスンコーナー参加者募集」とありました。申し込んだところ、「当日は名前を呼ばれたらステージに上がってください」との返事をいただきましたので、少人数で体験レッスンが受けられると思い気軽に出かけました。
 
ところがホールには予想以上の人々が集まっており、応募者の二人だけがステージに上がってレッスンを受けるというのです。もう逃げることはできません。人前で初めて吹く「アメイジング・グレイス」。トチリまくりながらも何とか最後まで行き着きました。「気持ちをアメイジング(素晴らしい)に持って、もう一度吹いてください」、「ほら、良くなったでしょう」。先生が励ましてくださり、あれこれと演奏法も指導してくださいました。そのあと、「皆で吹こうのコーナー」で「グリーン・スリーブズ」を合奏しました。
 
コンサートが終わると、体験レッスンの私達もステージに招かれたので、何かなと思っていると、素敵な赤いバラのプレゼントがありました。初めての人前での演奏(?)とバラのプレゼントで心が温かくなり、主人と二人で我が家へと歩きました。  (2000.12.02)
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「雨の日の新聞配達」

   千田祥子


その朝は前夜からの大雨で、どしゃぶりは容赦なく、新聞配達中も続いていました。私は濡れないようにビニール袋に入れた新聞を、家々に入れていきました。それでも濡れてしまうので、涙が落ちてきそうになりながら、配り続けました。

途中で何度も「もう新聞配達なんかイヤだ」と思いながら、残りの新聞を配り終える頃に時計を見ると、いつもの二倍の時間がかかっています。最後の一部をポストに入れました。頭も体も手も足も、どこもみなびしょ濡れです。やっとの思いでバイクを走らせ、家にたどり着きました。

玄関の戸を開けると、主人がタオルを持って立っていました。「お帰り、ごくろうさん。」その時、私は思わず「神様、無事に家に帰れてありがとうございます」と言っていました。とても辛い配達だったのに、私の口から出た言葉が感謝だったことに主人は驚き、ニコニコして迎えてくれました。だって、無事に家に帰ることができたんだもの … 。そして新聞配達は今も続けています。

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「実らないリンゴの木」

   千田祥子


 6年ほど前に、ホームセンターで富士と津軽のリンゴの苗木を買いました。夢は我が家の庭で収穫したリンゴでアップルパイを作ることでした。リンゴ大好き家族なのです。二、三年は花も咲かず実もつけないことに何とも思っていませんでした。

 その後も木はずいぶん大きくなり、葉は茂るのですが全く花が咲きません。花が咲かないので、実がなるはずがありません。今年も私たちの期待はおおきく裏切られ、一つの花も咲いていません。

 聖書に、三年の間実をつけないイチジクの木を、農園の主人が園丁にもう切り倒せと言ったという話があります。園丁は「今年もこのままにしておいてください、肥料をやってみますから。そうすれば来年実がなるかもしれません。もしそれでもだめでしたら、切り倒してください」とお願いしました。私たちももう一年、もう一年と、リンゴの木が実をつけるまで何年も待とうと思います。

 我が家の実らないリンゴの木を通して、学ぶことも多くあります。私の毎日は失敗も多く、落ち込んだり喜んだり、決して実を結んでいる生活とは言えません。でもリンゴの木の実がなることを願っている思いと同じように、多くの人たちの愛とゆるしによって今の自分があることを感謝しています。来年リンゴの実がなることを願いつつ。

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